海原(かいげん)創刊の辞より

海原(かいげん)創刊の辞より
 俳句形式への愛を基本とし、俳諧自由の精神に立つ
           「海原」代表 安 西 篤


2018年9月30日日曜日

関西スクール抜粋

海原関西スクール2023年6月(通信講座)
お陽さまに核融合か夏薊  村上紀子
無頼派なる男ありけり蓬餅  白石司子
白牡丹一輪にして小宇宙  太田順子
蛇の衣生家はとっくに誰も居ず  増田暁子
満更でもなく菠薐草茹であがる  榎本祐子
エンジン音だけに霾る茅渟の海  白石修章
三輪山遠景花に天平観世音(聖林寺)  樽谷宗寛
知らぬ間に燕の大家となりし母  上月さやこ
人が怖い日躑躅明かりに眠りたし  榎本祐子
雨上がる水満水の田に蛙  松本孜
天兵の裔住む郷よ五條夏  江森厚
沙羅の花ひざ抱く少女の翳りあり  増田暁子
のど輪攻め躱し勝利の柏餅  白石修章
守宮来ているおふざけ夫のストレッチ  谷口道子
(谷口道子記)


海原関西スクール2023年4月(通信講座)

ブレイキンくるくるボーイに風光る  江森厚
チーズピザ蛸連続の白昼夢  葛城広光
春の夜空白の心だけあり  上月さやこ
春炬燵影絵のような祖母の背  増田暁子
春疾風空き家になりし扉押す  村上紀子
うかうかと獏と朝寝をしてゐたる  白石司子
てらてらと春泥にわたくしの顔  榎本祐子
(谷口道子記)


海原関西スクール2023年3月(通信講座)

すかんぽを噛めば母郷の遠くなる  白石司子
草餅や二つと同じ顔はなし  上月さやこ
祖国防衛戦士や水盤の残り雪  谷口道子
天空の一艘囃し田の雲雀  榎本祐子
環濠の町や全き春霞  江森厚
無住寺にトンカチの音寒明ける  樽谷宗寛
きさらぎの君の荒野を振り返れ  白石司子
白梅咲いて大木に兜太先生  谷口道子
ものの芽や兄を超えし弟の背  増田暁子
          (谷口道子記)


海原関西スクール2023年2月(通信講座)

神殿に大蛇退治の舞を見て  松本孜
深雪晴れ地図になき名のあさぢ山 村上紀子
赤光の海へと還る冬の雁  白石司子
冬木立個性脱ぎ捨て立ちつくす  太田順子
ときに冬鳥の貌を被りて帰宅の子  榎本祐子  
遊園地座椅子の方が高いかな  葛城広光
音を吸ひ木立深々山始め  白石修章
配り餅して笑顔絶やさぬ山家妻  樽谷宗寛
若菜摘み待つ人のいる夕餉かな  上月さやこ
穫りのこしの冬郁子食むや夜久野峠  樫本昌博  
句と遊ぶ深夜私の一人旅  松本孜
枯山の眉目を過る鳥の影  榎本祐子
駱駝毛布父の人生匂い来る  増田暁子
紐育や公園馬車へ雪しんしん  江森厚
お包みのモゴモゴするや水仙花  樫本昌博 
冬空に目玉土門拳写真集  白石司子
                       (谷口道子記)


海原関西スクール2023年1月(通信講座)

コンマスをプロに換えしや第九立つ  江森厚
寒月や父待つ姉妹の数え歌  上月さや子
古希霜夜なほ追いかけるフッサール  白石修章
感情のひだるきときの楓紅葉  榎本祐子
いまさらの官能の帯ちり紅葉  増田暁子
己(し)が影を呼ぶ声か夜の木枯か   白石司子
                 (谷口道子記)


海原関西スクール12月(通信講座)
 海原関西スクール12月(通信講座)
切餅やフォッサマグナの東側  江森厚
日月(じつげつ)の屏風絵拝す文化の日(金剛寺にて)  樽谷宗寛
初時雨話し言葉もゆるやかに   太田順子
荒星やざらざら言葉こぼれおり  白石司子
発射台見せる勤労感謝の日   村上紀子
転生てふ朝のひかり銀杏降る  白石司子 
梟を高速道路に並べけり    葛城広光
僕は南瓜草間弥生のアイドルです  樽谷宗寛
ユダ記見ず十一月の古書の   江森厚
秋夕焼け一人ぼっちの道着の子  谷口道子
 なお、梟をの句は読み手を詩の世界に運んでくれるが、火傷の危険性あり、真似しないようにと講師からの注意書き。
            (谷口道子記)


海原関西スクール11月(通信講座)

仲間はずれのよう茸の山へ行ったきり  榎本祐子
言の葉はたまゆらのごと冬銀河  白石司子
の花精一杯のそよぎかな  太田順子
よ母よ海へ海へと 白石司子
たいものしか見ず紅葉且つ散る  榎本祐子
神主とフェリーを降りる新御輿  樽谷宗寛
寒やさっと引き抜くっしつけ糸  増田暁子
         (谷口道子記)


海原関西スクール2022年10月(通信講座)

存分に鈴虫の声夜の沈黙  白石修章  
柚味噌濃しフォッサマグナの向こう  江森厚  
風鐸の重くなりゆく秋の雨  上月さや子  
曼珠沙華己が湖より昏れてゆく  白石司子  
玉虫厨子羽音幾千時越えて  樽谷宗寛  
怺えきれず母は銀河を漕いでゆく  榎本祐子  
彼岸花すべてのしがらみ切る雄蕊  谷口道子  
ねむる児の掌に草の花すっぱい香  増田暁子  
鳥渡る番号だけの墓並び  白石司子  
瞑想の小五の映画予告編  葛城広光  
秋さびし街角ピアノのヘイジュード  樫本昌博  
月光や甍の底に沁み通る  江森厚  
蛍掌に韋駄天のごと勇む妣 樽谷宗寛  
ふと寄りし花屋に芒買いにけり  榎本祐子
王の葬象も随うゆるき隊列  谷口道子
          (谷口道子記)


海原関西スクール2022年9月(通信講座)

天皇の英断と知る終戦日  松本孜  
二百十日軍馬は海を還らざる  白石司子  
口中のほおずき鳴らし返事する  榎本祐子  
夕蝉や母の百年えらき  村上紀子  
父の手を真似て文(ふみ)書く盆の月  上月さやこ  
阿修羅像朱の眦にあぶれ蚊  白石司子  
備忘録微かな音する扇風機  白石修章
          (谷口道子記)

関西スクール2022年7月(通信講座)

原語家の郷土にポスター夏          村上紀子  
鈴なりの言葉立夏に立ち往生        太田順子  
汽車去りてドップラー音と虹遺す  江森厚  
他を寄せぬ青鷺われも知らんぷり  増田暁子  
良く生きた眠る兜太に若葉風        白石修章  
北斎の侘寝上手よ山滴る                樽谷宗寛   
英訳の農業遺産豆を蒔く              村上紀子  
夏の雨狆なら許せる肩の上           樽谷宗寛
 虹の水郷たしかなリズムの櫓が踊る 増田暁子  
指先は湖底の匂い蜻蛉生る             白石司子  
伊方炉を停めし水母や伊予水軍   江森厚  
まくなぎの見送り来る野上駅        白石修章
梅雨入りやジーンズの穴の若い肌  谷口道子
                      (谷口道子記)


海原関西スクール2022年6月(通信講座)

関ヶ原一次資料の染みと紙魚    江森厚
去年の化石今年の冷奴               葛城広光
梅は実に生家の更地の孤月かな 増田暁子
守宮鳴くやまと言葉のように鳴く 榎本祐子
山寺に酢の香ながれる青山椒      村上紀子
春の雷鴉に餌やるおばあさん      樫本昌博
一筆の横向き達磨武蔵の忌   樽谷宗寛
ごきぶりの逃げ足わたしの言い逃れ   増田暁子
獄(ひとや)とも茅花あかりの仮住まい 榎本祐子
言の葉も吹き返されて青嵐    上月さやこ
母の日や母の小さき頭を梳く   谷口道子
         (谷口道子記)


海原関西スクール令和四年五月(通信講座)


柳絮とぶなんだかんだとこの平穏    増田暁子
指先は真昼の昏さほうほたる      白石司子
ぼうたんの首切る仕事の男かな     榎本祐子
受難節防空壕に滑り台         江森厚
夜桜や俺も焼かれる痛痒い       白石修章
正午という隙間すっぽり入道雲     村上舞香
しじみ汁鍋蓋あげて郷がくる      樫本昌博
春園は指が無限に伸びる園       葛城広光
聞き役の母無し青葉闇深し       増田暁子
微笑みも憂いの渦の薄暑かな      太田順子
虎杖を嚙む音欲望も音たてて      榎本祐子
己惚れをときには見せて藤の花     村上紀子
終戦日あの日河原で魚漁り       松本孜
                 (谷口道子記)


海原関西スクール令和四年四月(通信講座)

風光る宇宙の始まりは無音                村上舞香
賢しらな少年もいて雛あられ             榎本祐子
春の水脈生命の流れを描くという       増田暁子
亀泳ぐ手と足てんで春の水底             白石修章
東風の中血の付きし鳥の羽根             村上紀子
生と死のつながってゆく春夕焼          白石司子
武悪面春風を工房へ通す         樽谷宗寛
けふ彼岸妣の牡丹餅の大きけり     樫本昌博
灯台守便りの余白に百千鳥       増田暁子
千曲川にすうっと流れる鍵の音     葛城広光
もったりと夕焼け含んだ六畳      村上舞香
春水の言葉に両手差し入れる      榎本祐子
家庭科の妻の出張目刺し焼く      江森厚
                  谷口道子記



海原関西スクール令和四年三月(通信講座)


オオムラサキのごと結弦の「天と地と」  樽谷宋寛
牡丹の芽朱い吐息というみやび               増田暁子
たましいのゆきかうところ白ふくろう      白石司子
ややこしく出来た人間鳥交る                  葛城広光
埒もなき夢を紡ぎて桃の花                     榎本祐子
雪柳葉芽か花芽か待てばよし      樫本晶博
寒風や人影の無い村疾る      松本孜
鳥帰るゲルニカに傷数多なり      白石司子
日常や底光りして春の霧        太田順子
着ぶくれてドクターヘリへ駆け寄る娘  村上紀子
父帰る一人膳にて薬喰         上月さや子
傍に来し片足だちするダイサギよ    樫本晶博
                  谷口道子記



海原関西スクール令和四年二月(通信講座)


辛亥の革命未だ蜜柑剥く        江森厚
咳ひとつ自分を解放するために     増田暁子
能面の男の囲む焚火かな        白石司子
餅を焼く刺青のように顔の皺      榎本祐子
深雪晴両手広げて飛ぶあそび      村上紀子
人日や人間臭き犬の貌                           増田暁子
年の豆患難辛苦を腑に落とし      上月さや子
雪しゃんしゃんゆずの香りの風呂に入り 松本孜
痴け空間かも薄氷の向こう側      谷口道子
                谷口道子記


海原関西スクール令和四年1月(通信講座)


聖母像ひかりの中に山眠る      白石司子
ものの芽や季節背負って快快     太田順子
歳晩の不明者名簿奴の居り      白石修章
荒淫の日輪渺渺と冬の海       榎本祐子
ふらここの速度は胎動の記憶     村上舞香
親指で布団押したら外は凪      葛城広光
澄み渡る天に綿虫湧き出ずる     江森厚
初雪や辛抱強く山坐る        村上紀子
雪踏や僧待つ母の枕経        樫本晶博
釦ひとつひとつ外して鵙の贄     榎本祐子
おつかいの空はいつも 水仙     葛城広光
賑わいしスマホの中の歳の市     上月さや子
踏切の向こう側にいるこがらし    白石司子
木枯しや木槿の種の飛ぶ準備     樫本晶博
陸亀の寄り合い歳末のリハビリ室   谷口道子        
                                   谷口道子記 



海原関西スクール令和三年十二月(通信講座)


開戦日ブーゲンビリア咲き乱れ    江守厚
薬湯に浸り足腰ゆるめけり      松本孜
オリオンを指で結びしエピローグ   上月さや子
登高や立山曼陀羅胸に秘め      樽谷宋寛
教室という冬ざれの海がある     白石司子
しごきては南天の実を投げている   村上紀子
祖母不在とうとう菊も焚かれけり   上月さや子
バーボンの小瓶忍ばすインバネス   江守厚
枯れを急く風にたてがみ梳かれけり  榎本祐子
つるし柿土塀の村は眠り入る     増田暁子
にこやかに逝きて奥多摩深紅葉    白石修章
ハレの日も菊の名人束ね髪      村上紀子
白(しろ)虎(とら)尾(のお)草ウェストン碑拭いおり
                  樽谷宋寛
極月の岸の渇きよ少年よ       白石司子
不自由な自由吊し柿吊るされて    榎本祐子
公園に誰もいなくて脳死する     葛城広光
冬夕焼海面は皮膚に似てきて     村上舞香
大徳利廻る寄り合い村祭り      谷口道子
                (谷口道子記)




関西スクール令和三年十一月


芋茎(ずいき)干す大笊小ざる持ち寄りて 
                  樽谷宋寛
くろぐろと二百十日の馬眠る     白石司子
花野風見えつ隠れつする子らよ    上月さや子
草の絮言葉のとどかぬところへと   榎本祐子
葱甘くなるころ山へ罠かける     村上紀子
旅枕すでにこうろぎ鳴いており    白石修章
不即不離三本仕立て糸菊よ      樫本晶博
雁が音や能面の嘆きは知らず     村上紀子
目借り時数十本の目薬や       葛城広光
鶏頭の焔気迷いを叱咤され      増田暁子
小鳥くるオレンジ色に髪染めて    榎本祐子
虫すだく男の美学なる闇に      白石司子
長き夜の水にならず鳥にならず    村上舞香
辻褄の動く言い訳「っす体」で    谷口道子
                 谷口道子記


海原関西スクール  2021年10月(通信教室)

七夕に配管すると管光る      葛城広光
朝顔に巻き付かれたる腕かな  榎本祐子
父の時計二百十日の音がする  白石司子
掃苔や妻と二人で線香上ぐ    松本孜
城垣を登った記憶秋の蛇      村上紀子
新涼のページをめくる波の音  白石司子
一輪の曼珠沙華さえ火のごとし  上月さや子
                     (谷口道子記)     


関西スクール 2021年9月(通信教室)

  (2021年9月から通信教室が再開。以下の句は先生の評価が高かった句です。参加希望者はいつからでも参加できますので、ご相談下さい。)


蛇衣を脱ぐに躰を震わせる          榎本祐子
塗り重ねてゆく原色ヒロシマ忌      白石司子
能面の泥眼に謎小鳥来る               村上紀子
ふくれつら除菌流行りの晩夏かな   太田順子
コロナ騒ぎ六日の蝉の後ずさり      白石修章
大空へ百日紅情の隅の剛(こわ)きもの   谷口道子
絶対的味方だったな盂蘭盆会         白石修章
             (谷口道子記)        





関西スクール2021年4月10日(通信教室)


少年の項かなしき袋掛       白石司子
トラックニガンダムニンギヨウハルノカゼ   樽谷寛子                                   
身の闇に走る影ありお水取り    増田暁子
結び目の緩くて春の人肌よ     榎本祐子
弥次郎兵衛ギュンと傾ぎて晩霞かな 野崎憲子
樹々芽吹くコロナ無縁の田舎道   松本孜
花を見る時おずおずと手を放す   村上紀子
菜の花や四明岳の裾広し      谷口道子
三点でゲームが終わる初日の出   葛城広光
             (谷口道子記)





関西スクール2021年3月13日(通信教室)


花かたかご揺れているのはわが地平    白石司子
すきだよとかな字の栞窓は雪       白石修章
花の冷かけこむ寺の唱歌かな       太田順子
鳥帰る廊下のリハビリこころ急く     増田暁子
産声がはや立ち上る駿馬の血       小宮豊和
ふらここの軋みや昨日を揺り戻す     榎本祐子
絵手紙の冬の鸛来し地酒買ふ       樫本昌博
ほろほろと遠き家路の春の宵       上月さやこ
春一番ドアー開くたびに除菌せり    村上紀子
冬桜の満開は寂しさ伴いて       谷口道子
底がある静寂だ底風車         葛城広光
                  (谷口道子記)

関西スクール 2021年2月13日(通信教室)

昨日わたしは風花になったと 鬼   野崎憲子
斜陽族椿の飾り大袈裟に       葛城広光
鳩の胸天使の羽根に変わってる    葛城広光
葉牡丹くすくす少女のようにかな      樽谷寛子
鈴つけて卒園登山拍手かな      太田順子
オンライン窓つぎつぎと風花す    白石司子
薄氷は踏むべし青春燦然と      白石司子
厚顔の小倉の鼬寝たふりか  (上階からの漏音) 白石修章
ファインダーの母の眼しぐれる白寿かな  増田暁子
終電車窓に映りし雪女郎       上月さやこ
こんこんと磐山に水寒椿       村上紀子
ことさらに「希望」思うや水仙花   谷口道子
はるかな空あるかなきかの春を追ふ  小宮豊和
睦むとき冬の金魚が翻る       榎本祐子
                                  (谷口道子記)

関西スクール    2020年1月14日
寒波くる人生苦しく山静か     坂本久刀
大年の猫と戯むる車椅子       村上紀子
限界集落海市の邑をゆくごとく 白石司子
婆ちゃんが青かびけずる鏡開   増田暁子
鯛の粗突き令和も暮れにけり   白石修章
冬の霧立ちこぎで消ゆジーパンの腰
                             谷口道子
君の手が梳く黒髪に寒椿       上月さやこ
一月の光ふくらむ木匠館(川上村)
                             樽谷寛子
地吹雪や体を病めば日々は旅   坂本久刀
老姉妹語らううちに去年今年   金岡純子
人日や己が両手で頬たたく     村上紀子
裁断す樹氷の育つ夜の音       榎本祐子
落つばき紅い布団の迷宮事件   増田暁子
大柘榴食ぶかしこまって二人   谷口道子
消灯の炉なる種(たね)火や遠雪崩
                             小宮豊和
元気です父に告ぐ日の雪見草   上月さやこ
          (谷口道子記)



関西スクール 2020年12月19日(通信教室) 


衣装箱きれいに貼って十二月      樽谷寛子
田はビルに淋しからずや寒雀      太田順子
月冴ゆる歩幅広げて近未来       太田順子
秋時雨名もなき鳥の凛として      上月さやこ
手に触れず釣り銭もらう十二月     村上紀子
農の血が波打つ野菜みずみずし         松本孜
奥歯抜くふと荒野に佇つ狐              増田暁子
前頭葉とろりと炙り古日記              白石修章
触れもせで計る体温社会鍋              白石修章
冬椿日常のかけら消えてゆく            坂本久刀
青年論氷柱太るがごとく純              白石司子
耳裏で蠢く言葉日向ぼこ               榎本祐子
かまどうま厨の蕎麦の香りけり          小宮豊和
西馬音内踊り静かに更ける月の舟        谷口道子
                                          谷口道子記




関西スクール 2020年11月14日(通信教室)


宝塚の色なき風や防犯パト        坂本久人
喉飴はエモいかぴえんパオン      葛城広光
老白髪戦中戦後の便りみて       松本孜
帰国娘のたっての所望庭の柿     村上紀子
秋の蝶自動ドーアのガラス越し    村上紀子
大根干すわだつみの声となるまで  白石司子
鬼火殖ゆるごと人体にウイルス    白石司子
満月に馬路村在り投宿す          樽谷寛子
高齢者てふ自覚足裏へ末枯野      白石修章
柿羊羹口実にして友来たり        上月さやこ
寄席はねし赤提灯の夜寒かな      上月さやこ
頬を刺す雨を楽しむ京時雨        谷口道子
筋肉も動脈もあり欅枯る          小宮豊和
青檸檬小鳥のように渡される      榎本祐子
                   (谷口道子記)



関西スクール 2020年10月17日(通信教室)


銀杏の降る夜なり地に言葉満ち   白石司子
暗闇を剥がしはじめるちちろかな  白石司子
疑うといつもパジャマを着る私   葛城広光
芋粥は小数点のようなもの     葛城広光
負けし子は早稲の香の中一つ星   白石修章
忘却の音色は深く乱れ萩      太田順子
おんぶばった母を泣かせし噂の村  増田暁子
散髪屋枝豆売りの札上げる     村上紀子
我が友の与論島(よろん)憲法座に新酒   樽谷寛子
コスモスの戦げば戦ぐほど夜明け  野崎憲子
コロナ禍を黙し愁思の波の音    坂本久人
木通の実半分ごっこの帰り道    上月さやこ
方位盤ふと白百合の崩れあり    桂凜火
夏果てのおさらいのよう耳鳴りす  榎本祐子
機械化に田は乾し上げて蚯蚓鳴く  松本孜
世間の闇吸うて来たらし秋揚羽  谷口道子
黄落の森姿無き影ながる      小宮豊和
              (谷口道子記)


関西スクール 令和二年九月十二日(通信教室)   

八月やいくさならぬと祖母の       太田順子
手のひらに銀河と書いて握りしめ     太田順子
水銀のように団扇光る刻         葛城広光
コロナ禍に負けず丹波の秋稔る      松本孜
トラウマのところどころに鹿の声     榎本祐子
老鶯の鳴く山畑や吾も老い        坂本久人
コロナ禍や時計草の影ゆらぎ継ぐ     坂本久人
新涼や風の途切れに地の匂い       白石修章
旅立ちし駅は無人に緋のカンナ      白石修章
銀河濃し紡錘形に眠る島(人間魚雷「回天の島)  白石司子
百日紅旧家の門の格醒ます        谷口道子
酷暑の一歩すでに私は「ぐでたま」に   谷口道子
銀河ふる稜線人は鈍(に)色(び)の中    増田暁子
労農の耳目に哀し牛蛙          樽谷寛子
白南風が薄物の母巻きしめる       小宮豊和
白鳥のだみ声帰還つげにけり       小宮豊和
                    (谷口道子記)                  



関西スクール 令和二年七月十一日(通信教室)

森女に甘える一休山笑う            樽谷寛子
夜の川腹に響くや牛蛙             松本 孜
梅雨寒やヒールにからむ捨てマスク  谷口道子
梅雨寒や寺の茶畑刈り揃う           村上紀子
深深と積もるコロナ禍大祓え         太田順子
なよよかや白い夜明けの稲の花    小宮豊和
紫陽花の萼に宿りし夜の雨       上月さやこ
うたた寝の夢を追いこす夏至の夜  上月さやこ
朝焼は賛美歌のごと父母のごと     白石司子
人間(じんかん)にウイルス紫陽花に日が当たる 榎本祐子
笛に息いま空蝉になる途中           榎本祐子
黒南風に雲読む卑弥呼の吊眼かな  白石修章
片陰ゆく防犯巡視山の街            坂本久人
ゆうやけこやけそして僕等のホームタウン  増田暁子


関西スクール 令和二年六月十三日(通信教室)  


春の下駄みたいな形に水へこむ      葛城広光
青嵐古刹の境内吹きめぐる              樽谷寛子
紫陽花や廃墟の隅で自己主張          松本 孜
想念の箱かな紅い夾竹桃                 太田順子
明日がいい今日の私に散華かな    太田順子
驟雨なり我がてのひらに父母に    白石司子
紫陽花や手洗い借りる無人駅        村上紀子
過疎なれど名医住みたり花菖蒲    村上紀子
たんぽぽのような赤ちゃん抱きにけり   小宮豊和
コロナよ鎮まれ泰山木の花ひらく   野崎憲子
鼻唄に合わせて新ジャガ炒る夕べ   上月さやこ
静寂に星を浮かべる代田かな       上月さやこ
新緑の朝の沈殿白きランナー       白石修章
郭公の託卵母は白寿に近くなり  増田暁子
明日へのきりのない夢山笑う     坂本久人
にぎやかに位牌の金文字春が行く   榎本祐子
山清水クエクエコンとタゴガエル
  (タゴガエルは赤ガエルの仲間だが山に響く大きい声で鳴く)谷口道子



関西スクール 令和二年五月九日(通信教室)


赤ん坊耳だけ大きくつくられて   葛城広光
迷路かな手帳の中の五月尽     太田順子
春は散歩寄り径近路まわり道    樽谷寛子
一揆の村過ぎしより蜂の唸り    白石司子
筆談の余白に蝶のいる真昼     白石司子
令和の世先は試練の新コロナ    松本 孜
戦後史を図書から拾う春炬燵    松本 孜
西行忌水面(みずも)を走る雲一片  坂本久刀
桜さくら痴呆が一人立ち尽くす   小宮豊和
約束の再演中止藤の花       村上紀子
雉と出くわす山上憶良かな     榎本祐子
つくしんぼ人に逸(はぐ)れてしまいけり  榎本祐子
亀鳴くや時に委ねて鹿苑寺     白石修章
幼き日蓮花を編みし淡き恋     上月さやこ
牡丹の芽祖母は華やぎ語らずに   増田暁子
色褪せのコロナマスクや空が薹立つ 谷口道子


関西スクール 

関西スクール 令和二年四月十一日(通信教室)
カッコ内は講師の評
種案山子婆の水筒肩にかけ    樽谷寛子
秋の川おんぬおんぬと音がする 葛城広光(このオノマトペは◎)
コロナ騒ぎ冴え返る田に老一人  松本 孜
鯨噴く夜なり海は青を謳い   白石司子(心象風景だが、ありありと景が見えて◎)
雪の回廊花道とも道行とも   白石司子
退職す分水嶺は雪ながら    小宮豊和
春はあけぼのひよこの大群生まれ出る  小宮豊和
六甲や春には春の怪気炎     太田順子(怪気炎はさもありなんと納得。なかなかです)
春星に懐中電灯まっしぐら   太田順子
句をひねる心の文字や風光る  坂本久刀
うぐいすのケキョの裏声媚薬なり 増田暁子(媚薬と断ずるは快挙)
囀や臨月の胎児(こ)がキックする 増田暁子(囀の季語があっての極上の一句)
新コロナ遊び上手の子ら公園   金岡純子
陽炎やコンテナ昇る巨大船    白石修章
葉裏よりふとさよならと初蝶   白石修章
窓側で自粛してをり花の雨    村上紀子
考える葦の若葉を風揺する    村上紀子(自然現象と人間の存在感を捉え、スケールが大きい)
ぎざぎざの己が影あり茎立ちぬ  榎本祐子(取り合わせ◎。茎立ちぬが抜群に良い)
コロナ禍やマスクの紐がからみつく  谷口道子
梅一輪濡れて寂しさまさりけり  上月さやこ(きっちり表現できている)
戯れに手と手を結ぶ夕霞     上月さやこ(恋人直前の気持ちを具体化し、うまい)

 (2020年3月は新型コロナを勘案して、休講としました)


関西スクール 令和2年2月8日
果てしなきあなたへの道冬銀河     上月さやこ
焼き鳥屋仮面だけになった人      葛城広光
枯野原父母という遠き汽笛       白石司子
賀状くれし友大寒に送るとは      金岡純子
追憶の波紋を残す初景色        坂本久刀
ボス猿に発信器付け吹きさらし     村上紀子
芹なずなていねいに生きて老い白む   増田暁子
日に九里けふは葛城山(かつらぎ)猪かけて  樽谷寛子
山眠る次なる命育みて         松本孜
寒鮒や流しに光る鱗とり        白石修章
年賀エアメール夫君の返信妻逝きしと  金岡純子
杖とする古人の影や大和冴ゆ      阪本久刀
別の世の音重なり来(く)寒夜なる      小宮豊和
日本はマグマの宮よ梅ひらく      野崎憲子
鋤く人とかすかに離れ寒鴉       村上紀子
余寒なほ内耳にジェラシーの微音    増田暁子
雁木坂下れば城の梅が香よ       樽谷寛子
沈丁花二〇歳の日日昭和かな      太田順子
春山茶花モガの母がふっと現る     谷口道子
                 (谷口道子記)
関西スクール    2020年1月14日
講師からの高評価の句
寒波くる人生苦しく山静か      坂本久刀
大年の猫と戯むる車椅子         村上紀子
限界集落海市の邑をゆくごとく  白石司子
婆ちゃんが青かびけずる鏡開     増田暁子
鯛の粗突き令和も暮れにけり     白石修章
冬の霧立ちこぎで消ゆジーパンの腰
                                  谷口道子
君の手が梳く黒髪に寒椿         上月さやこ
一月の光ふくらむ木匠館(川上村)
                                            樽谷寛子
地吹雪や体を病めば日々は旅     坂本久刀
老姉妹語らううちに去年今年     金岡純子
人日や己が両手で頬たたく        村上紀子
裁断す樹氷の育つ夜の音           榎本祐子
落つばき紅い布団の迷宮事件     増田暁子
大柘榴食ぶかしこまって二人     谷口道子
消灯の炉なる種(たね)火や遠雪崩
                                          小宮豊和
元気です父に告ぐ日の雪見草   上月さやこ

講師の説明

「婆ちゃんが」の句「鏡開婆ちゃん青かびけずってる」と動作に焦点を。
「鯛の粗」の句「鯛の粗突つき令和の木の葉髪」など具体物で。
「一月の」の句「一月の光ふくらむ奥吉野」等多くの人が連想可能な地名で。
「裁断す」の句、裁断すが何を裁断しているのか不明、布を断つなどと。
「元気です」の句、雪見草を雪間草に(季感が合わない)。



関西スクール  令和元年12月14日
講師の高評価を得た句、並びに講師の注釈

舞台終えし頬にひんやり冬の虹  金岡純子
  (キレがあればより広がる)
てのひらをこぼるる刻よ冬すみれ  野崎憲子
  (冬すみれが聞いている)
冬の月白さをまして君は来ず  上月さやこ
  (上五、下五を入れ替える) 
廃校の庭精気漲る落葉かな  坂本久刀
  (上五で切れ、落ち葉は朴落ち葉などより具体を)
枝ぶりは亡父の古さよ松手入れ  白石修章
  (あっさりしているが、なかなか良い)
行く秋の夜の心音それともノイズ  榎本祐子
  (ノイズに微妙な感じを掬い取った)
冬灯晩成さぐる電子辞書  増田暁子
昼飯を一人で食んで十二月  小宮豊和
  (大好きな句だ)
身体中空気になった岩の塩  葛城広光
  (空気にかわるに)
山紅葉日増しに艶を増す丹波  松本孜
藁塚の崩れしままや母の背や  樽谷寛子
  (新しい句、ありありと景が見える)
眼底に暗き海溝吹雪くなり  白石司子
  (現代俳句の特徴を持つ句)
霜柱いよいよ黒く豆乾く  村上紀子
  (色の対比が良い)
寒林や時は過ぎ行くすみやかに  坂本久刀
  (寒林が効いている)
喉越しの熟柿あちらから風来る  白石修章
  (あちらからに感心)
息止めて橋を渡れば髪枯れる 榎本祐子
  (橋をさらに具体的に)
爪ほどの椿の蕾命の温さを  谷口道子
  (下五を抜くしで止める)
身辺を行き来する影十二月  小宮豊和
  (十二月だからこそ)

                 (谷口道子記)

2019年11月9日   

飛沫のごとこの陽を楽しむしじみ蝶  増田暁子
虎落笛夜の瘡蓋を剥がしおり    白石司子
太き根や大地に深く黒枝豆        松本 孜
鴛鴦の番ようこそ道頓堀川        金岡純子
やらやらと肉を焦がして秋汚す 榎本祐子
人生は日々の織物文化の日        坂本久刀
豆を煮てをり月光を浴びてをり 小西瞬夏
断層の破砕の間延び蚯蚓鳴く    小宮豊和
読み聞かす声の安らぎちちろ虫 増田暁子
懸巣鳴く僕らは風と徒競争        樽谷寛子
死の淵を揺らしゐるごと鹿の声 白石司子
もて余す枝豆残渣嵩張りて        松本 孜
銀杏の潰れし道も風物詩            金岡純子
鳩吹いて夕陽を海に返すかな   村上紀子
人体の瑕のひろごる櫨紅葉    河田清峯
気がつけば老いの山坂体育の日 坂本久刀

2019年9月14日   関西スクール


夏草と斗う日々の深き皺    松本孜

アイドルを真似る幼子盆踊り  村上紀子

盆飾り来年もこの手でと合掌  金岡純子

塀の中私という驟雨かな    白石司子

夾竹桃の白さ疼くヒ・ロ・シ・マ   谷口道子
新茶淹れては蘇る濃き青空   坂本久刀
苺の実鎖かたびらを動かすぽ  葛城裸時
蝶鍬形(くわがた)虫竹馬の友も山住い  小宮豊和
壊れたピアノ一本指で弾く愁思 増田暁子
虫籠の闇に残りし目玉かな   白石司子
歯を抜かれ鰯雲まで帰るなり  榎本祐子
夏椿は揺れて未来へ翔るかな  坂本久刀

武田先生の講評
本日の最高句は
苺の実鎖かたびらを動かすぽ  葛城裸時
 ただし、次のように変えることを検討する。
蛇苺かたびらを動かす ぽ
独特で他の誰も書けない句だ。



2019年7月23日 関西スクールの概要

参観日紙の時計を持っている              葛城裸時瞬かぬ青蛙いてマトリョーシカ            河田清峯奥の院に悟道の音や滝こだま             坂本久刀川鵜飛んでる寝ぐせの髪が笑ってる          榎本祐子鶏頭花ゆずれない質(たち)そちこちに    増田暁子昼寝の犬ぶどう五粒の足裏かな            谷口道子老鶯や主義主張なく店たたむ             村上紀子空梅雨や水路に鋭い農夫の眼             松本孜バックパッカー風麦秋の観音寺            白石修章旅に来て鮟鱇の貌吾にへばりつく           樽谷寛子城跡の無人の校舎炎天下               坂本久刀完璧やおおむらさきの羽化終る           小宮豊和千代子さんあなたの小塩山立夏           谷口道子                  (谷口道子記)



2019年6月8日 関西スクールの概要




講師の高評価の句



昭和人平成豊かに老を生き          松本 孜

雨の声手繰りよせてる棕櫚の花        増田暁子

友来る土産の切り花蟻お供                         金岡純子

振り返るたび風光る岬かな                         白石司子
口漱ぐ母の音して山滴る                             野崎憲子
青水無月東京を打つ兜太日記                       河田清峯
茎立ちて西洋辛子菜空は紫                        谷口道子
遠景に据わる二上山花の雨                           坂本久刀
畔塗るや田は一面の水鏡                            松本孜
夜毎の闇記憶に溜める白牡丹                       増田暁子
抱きあげる母が笑うよ豆ご飯                       村上紀子
通りすがりの牛蛙でござります                   野崎憲子
枇杷の実が好きなんですよ虫歯抜く                 河田清峯
救命センター梅の実ややの爪ほどの                 谷口道子
アメリカを恋ふ呻きなり牛蛙                      小宮豊和

講評抜粋

「昭和人」は「昭和・平成」に。
「青水月」の句、「打つ」は「撃つ」の方がリアル感。
「茎立ちて」のく、下五を上に。
「夜毎の闇」の句、何処で切れるかによって、二重性の面白さがある。
「通りすがり」の句、変だが抜群にうまい。
                  (谷口道子記)


   


令和元年5月11日


講師の高評価の句



春の水飴がゆっくり割れていた      葛城裸時

光秀の母と眺める青丹波         村上紀子

銀杏並木一気に芽吹き都構想 GO       金岡純子

紫木蓮不惑は遠き傘寿なる        小宮豊和

ひらひらり黄蝶野を嗅ぐ奥の院      白石修章

寂しさも生き抜く力風光る        坂本久刀
牡丹の芽輪廻の色は燃ゆる血に      増田暁子
平成終わる日鵤(いかる)一羽我が庭に    谷口道子
一瞬の瓦の浮遊台風来          白石修章
一飛花に攫われている山羊の眼よ     河田青峰
心中に生きる山清水恩師の訃       坂本久刀
               (谷口道子記)
講評抜粋
「春の水」で切れる。「飴がゆっくり割れていた」ではなく、「ゆっくり割れだした」 でよくなる。
「一瞬の」の句、「台風来」ではなく「夏台風」でどうだ。


平成31年4月13日

講師高評価の句
春の風呂足の指よりやや低い       葛城裸時
厨子王の和船ゆらゆら梅の山       村上紀子
大切なものから捨てて桃の花       野崎憲子
中之島の鳥獣戯画展冴え返る       金岡純子
生き死には厳と病棟冬が逝く       小宮豊和
楽しさは自由の身や柳絮飛ぶ       坂本久刀
辛夷咲く母家も分家も香に包み      増田暁子
ふと春愁横断歩道の真ん中で       榎本祐子
ミモザ行方不明の時間です          河田清峯
樹木葬の幟はためくおむすびころりん   谷口道子
春の虹十一日を禱るまも         村上紀子
木の芽雨鍼灸院の繊き針         榎本祐子
リュウグウへ行きたしデコポンもらったり 河田清峯
                  (谷口道子記)
講評
「花ミモザ」の句、座五の「です」の断定が説明っぽい。
「行方不明となる時間」としてはどうか。



平成31年3月9日

講師による高評価の句

虚空蔵山の明るさ満たす初音かな   坂本久刀

永き日や路地いっぱいのランドセル  白石修章

淡海の春金平糖がびんの底      増田暁子

自転車通勤恋猫と擦れ違う      榎本祐子

西宮戎の韋駄天我が療法士も     金岡純子

兜太の忌若木にあふるる梅の白    谷口道子

旅の宿銘酒一献牡蠣フライ      松本孜

逃げ水追うメリケン波止場の赤い靴  増田暁子

耳疎き日や茹ですぎの法薐草     榎本祐子

去年今年再放送攻めのNHK     金岡純子

白梅や蕾に母を誘う色        村上紀子

 講評
「淡海の春」と「びんの底」、「自転車通勤」と「猫の恋」の対比の面白さ。
「逃げ水追う」の季語がうまい。
    


平成三十一年一月十二日

講師による高評価の句

鹿網を除して元の田に戻る            松本孜綾取りの三角四角年の果             白石修章バーチャルな恋のはあはあ霜柱     榎本祐子林檎むく凜と左手のピアニスト        増田暁子屯田碑にオホーツクの風初景色        坂本久刀初春や翁の面が謡い出す              樽谷寛子翡翠の目つけたる聖母七日粥      村上紀子年の瀬や平成平和に生き続け      松本孜屋島嶺の待ちかねている初明り     河田清峯初凪やはっと湾奥より汽笛       白石修章寒に入るトイプードルの二割引き    三好つや子掌にゴツと故郷(さと)の記憶よ大和芋   谷口道子石山寺に日向ぼこして風甘し      坂本久刀去年今年愚直に並べ五・七・五     小宮豊和

 今回の注意点
 句を鑑賞する場合、意味で読もうとしないこと。句の生のところ、イメージを感じ取るように。
 逆に、句を作る場合。独りよがりではだめ、読み手を意識して少し具体を加えればよくなる。
 写生句はイメージが浮かびやすい。ただし、並みになりやすい。心の中の景を読むのも良い。


関西スクール 平成三十年十二月八日 

講師による高評価の句

秋の蛙しまい忘れし片足よ    樽谷寛子
雛ぎくのぎくに落ちた聴診器   葛城裸時 軒に吊る朱き猪肉手に余る    増田暁子 梟の眠りの中は多面体      白石司子 梟は一刀彫の闇なんだ      三好つや子 次の風に乗ってくつもり冬紅葉  野崎典子 迎合なしやどり木は冬青々と   小宮豊和冬隣無名地蔵の欠茶碗      松本 孜サフランや城門を出る飾り馬   村上紀子表参道べた足軽き落葉かな    白石修章寒星や育ての親の故山行く    坂本久刀北斎の腕まくり4Lの小布施栗  谷口道子
缶蹴りの缶に広がりゆく冬野   白石司子 ちゃんちゃんこ月曜病を懐かしむ 三好つや子十二月八日のバスに乗らんとす  河田清峰 川上は銀の櫨の実鳴るところ   榎本祐子
         (谷口道子記)

  


2018年11月10日 関西スクールの概要 

講師による高評価の句

 東方に光あり萱の岩湧山(いわわき)    樽谷寛子 
 身を反らし点ける灯火京の秋            白石修章 
 枯木立DADAの目玉のあまたなり             白石司子 
 小春日やエンディングノートの筆進む       長尾向季
 蚯蚓鳴く左の欠けるニュースかな               三好つや子 
 人生の午後ピカピカの釘を打つ          坂本久刀
 夏休み粘土のように柔らかい          葛城裸時 
「もみずる」百回唱え鬼になる          榎本祐子 
 チクチク刺す黒の力や黒枝豆          谷口道子
 泡立草つづく伊予路や背を正す         白石修章
 魚眼レンズの中に極月の街                 白石司子
 伊吹嶺に対峙どうどう稲架襖         長尾向季 
 どっちにも歩のある選挙大根引く             村上紀子 
 陽の重み直哉旧居の柿すだれ         坂本久刀 
 躁鬱やオリオンを組みまた解く        榎本祐子
 短日や地下足袋を脱ぐ茶の香り        松本孜 
 羊雲午後の女教師名調子                 小宮豊和


  本日のひとこと

 あまり知られていない地名、山名をつかう場合は、その土地の特徴的な植物などへ焦点を持っていくこと。 
 例1 萱の岩湧山(いわわき)を 岩湧山の穂芒 にするなどの工夫を。 
 例2 伊吹嶺は丁度良い知名度。これが、比叡山や富士山では山のイメージがはっきりし  すぎてバランスが悪くなる。
                              (谷口道子記)

関西スクールの概要 2018年10月9日

講師による高評価の句

1   吹っ切れて秋天走る車いす                 村上紀子

2  滑莧村のポンプ井涸れにけり           樽谷寛子

3  番雀か草露啜りおるバス停                  金岡純子

4  草の花夕陽は透けて語り上手           増田暁子

5  雨上がり毬を飛出す丹波栗                  松本 孜

6  缶詰と缶切り冷やす冷蔵庫                  葛城裸時

7  豊の秋モアイのごとき顎が行く          三好つや子

8     宵闇や無灯火自転車すれ違ふ           長尾向季

9  花野風浅き傷より乾きゆく               小西瞬夏

10  平城宮跡の音色や初嵐                      坂本久刀

11  秋蝶の翅たたむように戦後史       白石司子

12  鱏のごと今日も見ている火夏星      白石修章

13  虹の根をつかみそこねて穴惑い      三好つや子

14  鳥渡るいのち一つを引っ提げて      小宮豊和

15  心頭くらくらいちじく酸いくなる     榎本裕子


                                          (谷口道子記)



2018年9月8日関西スクールの概要 
講師による高評価の句
1  蟬骸そこここ生まれてよかったか    金岡純子
2  かなかなの語尾のにごりの雨もよう   増田暁子
3   濃尾の青田尼僧絵のごと風のごと     樽谷寛子
4  終戦日日焼けた疎開の子の行方       松本 孜
5  雲の峰微動だにせぬ延長戦         白石修章
6  雲を脱ぐ丹波の富士や稲の花        村上紀子
7  シベリアの五万柱に芋殻焚く        小宮豊和

8  林檎人夢にばかり包まれて         葛城裸時
9  全てやりたき整理整頓猛暑来る     坂本久刀
10  調査船稲妻直に沖を切る        谷口道子
11  熱帯夜標本箱という秘境        三好つや子
12  かすれたる家系図烏瓜の花       長尾向季
13  腐りゆく水にぼんやり水中花      榎本祐子
14  空に放つ紙飛行機子規忌なり      白石司子

本日の注意点

 常々、「キレを入れ」と言っているが、「 ”の”でつなげることによる、”切れつつつながる” 得もいわれぬ空気感を表現することも大事 」

 

2018年7月14日関西スクールの概要


 講師による高評価の句
1   川音は闇を執せり恋蛍           村上紀子
2   ブラックバス雑魚喰い荒す青葉闇      松本 孜
3   言い訳の闇にほうたる色退せて       増田暁子
4   植田一面雲も甍も故郷のもの        白石修章
5   サングラス困ってますねん涙目に      谷口道子
6   水中花糊を貼るのを思い出す        葛城裸時
7   黒塗りの教科書の中くちなわ匍う      白石司子
8   曲屋の夏の夜神楽天鼓かな         樽谷寛子
9   冷奴おまけのように父座る         三好つや子
10   胸鰭背鰭菖蒲畑に隠しおく         榎本祐子
11  訃報来る緩む齢に植田風          坂本久刀
12  揺れ最中地震中継見るも我         金岡純子
13  鮒鮓や出雲に生ワニ食べる村        長尾向季

本日の注意点
「名詞」「動詞」「名詞」の組み合わせの場合。上五、下五の置き方に注意。
                                                                                                         (谷口道子記)

関西スクール

関西スクール

当分の間、通信講座方式で開催しています。
海原会員以外の方やまッたくの初心者の方も歓迎です。武田先生の温かく、丁寧な指導の下、和気あいあいとした雰囲気で進められています。

投句   基本的にメールかライン投句。
     やむをえない場合はFAX、葉書きによる投句も受けつけています。
     締め切りは、現sp句として毎月第4木曜日

講師   武田伸一 (金子兜太主宰誌海程編集長、後継誌・海原発行人)
費用   1か月2000円(通信講座の期間中)

世話人     榎本祐子
        谷口道子(投句受付係) 

2018年9月21日金曜日

大阪句会の抜粋

大阪句会抜粋

海原大阪句会 2023年7月句会(通信句会)

「せーの」で始める筋トレデイケアー    谷口道子
雷や一本きりのHB鉛筆      豊原清明
梅雨籠り「自由への賛歌」日がな聴く  谷口道子
 透けてゆく母に色たせ青葉風     新田幸子
 夜の雨たたき出したる蝉の声     白石修章 
 留め石で雀あそぶや半夏生      樫本昌博
既視感の敵か味方か泥濘に       瀧澤泰斗
パリー祭お菓子の好きな妻よ子よ  樽谷宗寛
颱風や舌の厚さの頼もしさ     豊原清明
 キリがないからこの辺にして螢   野﨑憲子
         (谷口道子記)

海原大阪句会2023年6月(オンライン句会)

人の目が気になりだして散る四葩    瀧澤泰斗
夏の夜の野外オペラよヴェルディよ(法隆寺)  樽谷宗寛
新緑や夕餉身厚き焼き鰈               白石修章
ウクライナから麦が来ない暗い駅   瀧澤泰斗
蛍火や生涯通す嘘ひとつ               新田幸子
源内の消えし校歌や大向日葵         野﨑憲子
黄揚羽生るしばし吾の元留まりて   谷口道子
                          (谷口道子記)

海原大阪句会2023年5月オンライン句会

報復に光なし泰山木の花ひらく 野﨑憲子
追悼句書かぬままなり青葉騒 樽谷宗寛
夜が過ぎ又よるがきて麦秋 野﨑憲子
きのうきょう白がいいんだ花潜 樫本昌博
髪を梳く指に春愁匂いけり 新田幸子
さえずりはボケと突っ込み雀の巣 白石修章
もっと生きろと喝を入れられ子供の日 瀧澤泰斗
鳥去ってつくづく無なる足の裏 豊原清明
広縁の脳トレ九路盤風光る 谷口道子
         (谷口道子記)



海原大阪句会2023年4月オンライン句会

 鳥帰る監視カメラに影残し 樽谷宗寛
陽炎に小首傾げる相思鳥 樽谷宗寛
春山の満開なりと病母眼づ 豊原清明
人となりメアドにしのぶusuyukiso 瀧澤泰斗
相棒はロツクシンガー空海忌 野﨑憲子
ぽぁんと日和たんぽぽ辺りで会釈する 新田幸子
夕ひばり僕を呼んだの誰だらう 野﨑憲子
また一輪揺らぐ枝先初桜 白石修章
葉桜やシニアカートがつんのめる 谷口道子
木槿の葉芽は実の殻そっと突きにけり 樫本昌博
               (谷口道子記)

大阪句会2023年3月  オンライン句会

 空席に白詰草の首飾り 白石修章
 大日や天鈿女(あめのうずめ)も青鮫も 野﨑憲子
 動くのは雲か地球か春一番 瀧澤泰斗
 春の日の細胞増殖旅へ出る 豊原清明
 桜木や古今の文人狂わせり 瀧澤泰斗
逞しき園児の声よ春の公園 豊原清明
 ぴょんぴょんと若き目白にカメラの婆 樫本昌博
 学童の笑みのまぶしや手話初め 樽谷宗寛
 渦巻く怒りよ亜細亜の夕陽炎 野﨑憲子
この潮風が好き三月のブルースリー 野﨑憲子
見送るは踊り子号や伊豆の春 瀧澤泰斗
末黒野やくすぶりは私何の怒りか 谷口道子
香華手にたおやかな女春の丘 新田幸子
                              (谷口道子記)

大阪句会2023年2月 オンライン句会

宇宙船は陽炎の中ぬらりひよん 野﨑憲子
ツンドラの上にオーロラ太古の火 瀧澤泰斗
野猪(やちよ)肉や村の爺婆かしこまる 樽谷宗寛
お隣はどんちき騒ぎ大試験 白石修章
窓越しの冷気つづら折れ行くスキーバス 谷口道子
ましぐらに沖へ沖へとしやぼん玉 野﨑憲子
無言館に雪降り積むふただ静か 瀧澤泰斗
春来たり泉州マラソンののぼり立つ 白石修章
蟇鳴いて伸び伸び伸ばす母の皺 豊原清明
大炉なり亭主好みの奈良絵碗 樽谷宗寛
スマホ打つ指如月の水の冷たさ 新田幸子
アガパンサスや傘骨開けり冬の空 樫本昌博
            (谷口道子記)

大阪句会2023年1月  オンライン句会

どんど焼き私の背骨を燃べようか 谷口道子
太陽の塔からくれなゐの兎 野﨑憲子
三が日四つ這いリハビリほろ酔いで 谷口道子
はや七日今朝はゆるりと粥養生 新田幸子
どれどれと鼻をつままれ大嚏(おおくさめ) 樽谷宗寛
初風の塵拭い去り須磨神戸 白石修章
初雪や高野号の軋む音 樽谷宗寛
朝霜あび一粒咲けり小米花 樫本昌博
初鴉家族の両手水たまり 豊原清明
初日の出ガリレオ想う天動説 瀧澤泰斗
                      (谷口道子記)

大阪句会2022年12月句会

   (オンライン句会、ズーム句会は休会)
 歳晩の湾へ高々コンテナ船 白石修章
 椋騒ぐ俄かの雨は不吉なる 瀧澤泰斗
 とうとうと鷹一心のコツ忘れ 豊原清明
兎追いこの線越えたら家帰る 豊原清明
古日記堂々巡りの時間論 白石修章
 陽は昇り惰性で回る日向ぼこ 瀧澤泰斗
 身の内の水溢れ着て冬すみれ 新田幸子
 炉開きや三年振りのにじり口 樽谷宗寛
 熱戦を終えて大雪歌祭り 白石修章
 山茶花散る盲の尼の掌 新田幸子
 船長は山茶花宇宙船地球号  野﨑憲子
筋肉強化師走に四つ這い指示されて 谷口道子
           (谷口道子記)

大阪句会2022年11月26日

 時がしまつちやうから十一月の雨音 野﨑憲子 
 理由わけあらぬさりし君は月の兎  樫本昌博
 ルアー沖へ秋天はるか三ノ宮  白石修章
 末枯(うらが)るるナンバンギゼルに残る紅  樽谷宗寛
 酸欠のヒンドゥクシは雪模様  瀧澤泰斗
 難民の少年ぶらんこの冬  豊原清明
 正倉院展マロングラッセの濃密  新田幸子
 冬の庭師ばっさばっさの伐りっぷり  谷口道子
          (谷口道子記)


大阪句会2022年10月29日(オンライン句会)

秋となり一人一人と昭和消え 瀧澤泰斗
しみこむ影よ桔梗(きちかう)に風の言の葉 野﨑憲子
ひと骨の輝く土の寒露なり 豊原清明
行列の蕎麦屋に赤い蕎麦の花 樫本昌博
山又山吉野源流水澄めり 樽谷宗寛
たましひのはなるるけはひ霧の杖 野﨑憲子
さわやかや「秋の季語よ」と一里塚 瀧澤泰斗
相続の話も途切れ彼岸花 白石修章
栗拾い村の三婆卒寿です 樽谷宗寛
花野行く臍の緒の箱ふところに 新田幸子
痛む脚やっと一段露草一輪 谷口道子
            (谷口道子記)

大阪句会 2022年9月24日(オンライン句会)


また朝が生きてる奇跡白木槿 白石修章
 波音にまじる心経蛇走る 野﨑憲子
 玉虫厨子羽音幾千時越えて 樽谷宗寛
 鮎の川「引き抜き早瀬」の竿しなる 谷口道子
 空蝉のみしらぬ繭と存えり 樫本昌博
 どっしりと肥えて笑いし秋蛙 豊原清明
 冬が来る目覚めよロシア襟立てて 瀧澤泰斗
 りんご煮るうふふあの子声変り 新田幸子
               (谷口道子記)

大阪句会2022年月7月30日(オンライン句会)

夫婦二人残る冷や麦赤と青          樫本昌博
爺ちゃんは夕顔開くとき夕食(ゆうげ)  新田幸子
ぶきっちょに玉葱吊す紅顔の爺        樽谷宗寛
我が町の土に根ざして青大将         豊原清明
夕映えの打ち水に声「おきばりやす」   新田幸子 
鼻穴の大きくなりし蟻の          豊原清明
牛蛙の子の上目づかいに一歩寄り      樫本昌博
疣蛙(いぼがえる)悠々自適の貌上げて  樽谷宗寛
九条を嗤う議員に水掛ける        瀧澤泰斗
雨雲の肖像があり夏が射す        豊原清明
                 (谷口道子記)

大阪句会2022年6月25日(オンライン句会) 

春の猫幾何学的な寝相かな  瀧澤泰斗
蝌蚪として生まれ無心に泳ぐ吾  樽谷宗寛
泥の兵戦地の真土蜥蜴生きる  豊原清明
ここ石段なかなか動かぬ  樫本昌博
近寄れば発火するぞと夜の新樹  野﨑憲子
青墨をする初夏の結縁写経かな(唐招提寺)  樽谷宗寛
杜若咲いて本堂遠のけり  樫本昌博
入梅や左の乳房の重くなる  谷口道子
ほうたるに首長龍の記憶   野﨑憲子
麦秋の果つることなき佐賀の国  白石修章
仏壇でも主張する姉夏兆す   瀧澤泰斗
磯遊び波に口紅塗りません   葛城広光
            (谷口道子記)

大阪句会2022年5月28日(オンライン句会)

初夏の明るい洞です鯉の口  新田幸子
向日葵の正面に立つという勇気  村上舞香
猫の居て田の字座敷の珈琲店  谷口道子
夏の夜の月が漕ぎますチチカカ湖   樽谷宗寛
万緑や馬の背に立つアルルカン  新田幸子
短夜や水と光としかなくて  村上舞香
あんぱんの桜の臍や艶めかし  樽谷宗寛
武器といふ武器花咲か爺さん花にせよ  野﨑憲子
藤のした胸元ゆるめ香さそう   樫本昌博
どこにゐるの?霞のここよ、あなたは?  野﨑憲子
ケの昼だな人体歳時記夏渇き  豊原清明
            (谷口道子記)


大阪句会2022年4月23日(オンライン句会)

初桜トーストかじりじっと立つ  豊原清明
南風が膨らんでゆく先に街  村上舞香
渚には貌がぎつしり春落日  野崎憲子
入道雲私が持っている余白  村上舞香
千年の片恋それは光の巣     野﨑憲子
父さんは無事に生きてる」春の泥   瀧澤泰斗
砂利舟に流れ散りたる島桜  白石修章
旅の絵師春の大地を風のごと  樽谷宗寛
五位鷺や無冠の吾は殿に   新田幸子   
人類のゐない景色や夕陽炎   野﨑憲子
四月バカプーッと放屁のロシアかな   瀧澤泰斗
                                                (谷口道子記)

大阪句会2022年3月26日オンライン句会

ブーチンよ薄の原に埋めっちまをか    新田幸子
クロッカス影落とさぬようしゃがみ見る  樫本昌博
オリパラのさなかにキエフ消えにけり   瀧澤泰斗
道草の道草の果て春落日         野崎憲子
目覚ましが崖の端で鳴っている      葛城広光
投句日か寒鴉きし句作中         樫本昌博
孫二才緑の雛菓子避けて食べ       瀧澤泰斗
百千鳥たましひの柵とき放て       野崎憲子
翌檜や無為の私に日が暮れる       新田幸子
水温み無防備すぎのメダカかな      樫本昌博
訃の配信役目を終へて春の鉄棒      白石修章
何処かで又ちひさな渦巻きたねをの忌   野崎憲子
啓蟄や地天女泥の手足だし        樽谷宗寛
木喰仏モグモグタイムの笑顔たち     谷口道子
               (谷口道子記)

大阪句会2022年2月26日(オンライン句会)

恍惚の一閃火事と絵画かな            葛城広光
窓外の雪は東寺を縁取りて            瀧澤泰斗
牛鳴いてわっと村中霞かな            豊原清明
雪搔きのシャベルが触れた真空色   樫本昌博
火の鳥や地軸の傾きで笑う              野崎憲子
歌詠みの梅詠みてより季の            新田幸子
身の底にかすかなビート古稀の春   白石修章
岩牡蠣啜る青年の影もつれ            樽谷宗寛
中屋根の陽だまり猫の足裏見ゆ      谷口道子 
           (谷口道子記)

大阪句会2022年1月29日(オンライン句会)

胸帯(むなおび)を叩いて春着着終えたり  新田幸子
幼き日棚田駆け行く凍み渡り                 樫本昌博
天井の一点見つめ寝正月                       白石修章
虹の後地蔵の涙滲みにけり                    葛城広光
初詣牛丼初の女(ヒト)も                      瀧澤泰斗
ものぐさの妻と吉野や年の宿                 樽谷宗寛
思ひ出の丘よ月影のおほかみよ                  野崎憲子
初鴉余命を語れば空しいことヨ              豊原清明  
立ち燻(くゆ)るお香やいつしか妣の顔  谷口道子
                 (谷口道子記)

大阪句会2021年12月16日(通信句会) 

FAXや長い雨や横にある(竹内さん哀悼句)
                                                葛城広光
箸先のさばきの自在鰤大根               白石修章
吉右衛門の永久(とわ)の俊寛寒月光  樽谷宗寛
柿の木や実ばかりつけて熟し揺れ     樫本昌博
枯れ行くか肥後の守を懐に              新田幸子
真子様にシンパのカミさん雁渡し     瀧澤泰斗
冬眠もならずやひかりの膝小僧          野崎憲子
深山のつり橋ねむり続ける母と私の  谷口道子
            谷口道子記

大阪句会2021年9月25日(オンライン句会)

しゃりしゃりと炭が崩れる原爆忌  葛城広光
コーヒーを細胞に満たし秋耕す   瀧澤泰斗
コロナ禍やまゆ描き足して陣ヲ出ず 新田幸子
いつもどこかに紅ひとつ鰯雲    野崎憲子
向日葵や開花寿命は営業日      樫本晶博
居待月ぢっと仔猫の痩せ身板      豊原清明
別れ来て毬栗拾う戦中派          樽谷宋寛
転調す夕陽の水面つくつくし      白石修章
盆の月地下水脈のごと人間(ひと)生きて  増田暁子
屋根猫や大地を知らないのんき猫  谷口道子
                                 (谷口道子記)

大阪句会 2021年6月26日

小判草摘んでふりふり瞼とじ   樫本昌博
白鳥が中学生に付いて来る    葛城広光
黒雲が梅雨あけの空案内する   小宮豊和
弥勒めくゆで卵なり青葉風    白石修章
賛否五分日本迷走六月尽     滝澤泰斗
竿の先空に円弧の鮎解禁     谷口道子
青葉潮海女も白砂も燿よえり   樽谷寛子
五月雨の海辺ドラキュラの牙   豊原清明
夏椿ポン助とある千社札     新田幸子
言霊の森の奥から揚羽蝶     野﨑憲子
チャップリン相似形だな黒揚羽  増田暁子
癇性の父に差し出す蕨飯     榎本祐子
             (榎本祐子記)

大阪句会 2021年5月22日(通信句会)

皆おとな母は早よから端午の支度 樫本昌博

雹の夕地蔵ぶつぶつつぶやいて  葛城広光

十重二十重森の緑の暗さかな   小宮豊和

葉桜や置いていかれしワクチン戦 白石修章

被爆国ノーモア核兵器批准せず  滝澤泰斗

末黒野の果て末期の母の眼あり  谷口道子

わが魂に花種蒔くよ妻ありてこそ 樽谷寛子

春深し椅子に座りて野馬の面   豊原清明

職解かれおとこ米研ぐ揚げ雲雀  新田幸子

空海を攀じ登りけり黄金虫    野﨑憲子

虚も実も剪定バサミの拠り所   増田暁子

神舞の袖翻る青嵐        榎本祐子

             (榎本祐子記)


大阪句会  2021年4月24日 通信句会

虎杖の折ってポン食べてまたポン    樫本昌博

孝行が上手すぎて既に僧   葛城広光

バッタだけ元気だ草の波うねる   小宮豊和

永き日や見つけし亡父の通信簿   白石修章

一首一句俳歌壇に風光る   滝澤泰斗

酒蔵の香りを連れて花吹雪   谷口道子

花の岡三千世帯が蠢(うごめ)きぬ   樽谷寛子

肋間に風吹くは何二月尽   新田幸子

春の渚へひらききる感情   野﨑憲子

顧みる人生サイクルみな朧   増田暁子

電波時計狂って連翹爆発   榎本祐子

                (榎本祐子記)


大阪句会(通信句会) 2021年3月27日

雨あがり蛇の髭の実は光放つ   樫本昌博

浮かぶ雲本当はちぎり絵なのですよ    

                葛城広光

創造の春遅々として芽の硬さ   小宮豊和

豚玉や昼のビールの途中下車   白石修章

瑠璃色の狸の目力雪を透く    滝澤泰斗

侘助や濃き紅色が吾を嗤う    谷口道子

覚えているよ紙雛折し母の手を  樽谷寛子

春の蚊のバイクの音の激しさよ  豊原清明

花こぶし歩こう今日もいい天気  野﨑憲子

人と会う嬉しさに似て花種まく  増田暁子

望郷のごと茎立ち突っ立って   榎本祐子

             (榎本祐子記)

大阪句会 2021年2月27日

拳あげじっと時まつ冬デイゴ  樫本昌博

カタツムリ殻の中の曲がり風  葛城広光

鼻すする老妻となりバレンタイン   白石修章

一人居の心にはるか虎落笛  小宮豊和

自由の碑アルプス遥か冬日和  滝澤泰斗

空へ血を吐くごとしや詩人の魂  谷口道子

へうへうと泥つき大根運ぶ爺  樽谷寛子

初蝶の先に集まる両手かな  豊原清明

枯はちす声上げ五体軋みゆく  新田幸子

手を放すなら今風船がノツクしてゐる  野﨑憲子

   (フクシマから10年) 

斑雪いつかは戻ると移り住み  増田暁子

冬の噴水人寄ればはしゃぎだす  榎本祐子

               (榎本祐子記)

大阪句会 2021年1月23日(通信句会)

千度の火くぐりし母よ冬の月      樫本昌博

球体の夜を汲んで寝坊する       葛城広光

古い森鹿の形の影走る         小宮豊和

ゆく年や鏡の中に居るは誰       白石修章

カバ親子窓から怪訝の雪野原      滝澤泰斗

透ける空希望の色足す寒椿       谷口道子

飛火野や鳥の目塞ぐ春(はる)疾風(はやて)    樽谷寛子

たましいを撃ち抜くものよ冬鴉     豊原清明

語部は紅いびいどろ雪しんしん     新田幸子

初日さす雲間雲間からイマジン     野﨑憲子

千枚漬け発酵してくる息子(こ)の正論 増田暁子

自由意志です林檎かじってます     榎本祐子

             (榎本祐子記)



大阪句会 2020年12月19日 

絵手紙の冬の鸛来し地酒買ふ   樫本昌博

干し大根十数羽として飛びたちぬ 葛城広光

両岸にさみどり生ひて小川かな  小宮豊和

爺の顔ちらり覗き見おでん鍋   白石修章

父母姉に取り残されて冬の旅   滝澤泰斗

月の舟大福好きの先生よ     谷口道子

(金岡純子追悼句)

句友悼みて銀杏散るなり御堂筋  樽谷寛子

寒鴉途切れ途切れの呼吸かな   豊原清明

竈猫検体叶わぬ身となりぬ    新田幸子

鈴が鳴るとき狐火みんなゐなくなる

                野﨑憲子

着ぶくれて天地無用の荷となりぬ 増田暁子

ずるずると帯を引き摺る紅葉狩  榎本祐子

             (榎本祐子記)



大阪句会  20201121 

冬アザミ吸いつ蜂雀ホバリング  樫本昌博

コロナ禍で私一枚のコピー紙   葛城広光

鳥獣虫魚冬の木霊が森語る    小宮豊和

落葉焚昨夜のさよなら満塁打   白石修章

秋場所の土俵飛び出し桟敷まで  滝澤泰斗

庭木の陰白き光や野菊咲く    谷口道子

新豆腐届く刻です丘晴れて    樽谷寛子

冬天の殺す思いの憎さかな    豊原清明

家中を灯してひとり暮早し    新田幸子

たつぷりと陽を懐に冬立ちぬ   野﨑憲子

自分史や灯ともすように石蕗咲いて

増田暁子

少しずつ時計の狂う紅葉山    榎本祐子

            (榎本祐子・記)



大阪句会 2020年10月21日    

砥峰はゆらら縦縞すすきなり     樫本昌博
無造作にタオル凍って蛍光灯     葛城広光
白く白くはしる秋風空が鳴る     小宮豊和
時間論厭きて秋日ごろ寝かな     白石修章
暴風に飲み込まれゆく特攻基地    滝澤泰斗
十月は普段の極み日暮れ路      竹内義聿
玉すだれパキっと出そろう妣の庭   谷口道子
色鳥来なぜか悲しい女優の死     樽谷寛子
秋燕やこの谷底へまた来いよ     豊原清明
捨案山子眠る瞼は持たぬまま     新田幸子
露の玉の中に玉ありヒッヒッフー   野﨑憲子
信楽焼(しがらき)の子だぬき二ひき草もみじ   増田暁子
またひと粒山に吸われて帰る星    榎本祐子
               (榎本祐子記)

大阪句会 9月19日

イソジンが蒸発するや恋心    葛城広光
案山子たつ家族揃うは畑かな   樫本昌博
羅(うすもの)の母を白南風巻きしめる   
             小宮豊和
子等帰り高きを競う秋茜     白石修章
アルプスにキベリタテハの気ままかな
             滝澤泰斗
読み書きの夜長あなたは不老不死 竹内義聿
怪しげなざわわきっと大夕立   谷口道子
コロナ禍(まが)バベルの塔の絵ざわつくよ
             樽谷寛子
私の柔らかい臀肉天の川     豊原清明
カマキリのゆめ曼珠沙華の夢夜明け
             野﨑憲子
屏風絵を抜けて遊女の月光浴   新田幸子
かなかなや不要不急と肩が凝り  増田暁子
沼(ぬ)島(しま)よりポルカのリズム秋黴雨 
             矢野千代子
人に逸れ笛の洞ろへ秋の息    榎本祐子
             (榎本祐子記)

大阪句会 2020年8月13日

明易や蜩鳴くよここは祖谷    樫本昌博
真っ直ぐなストロー速い新幹線  葛城広光
鶏頭のでこぼこ坊主頭かな    小宮豊和
明けきらぬ村に残月田草取り   白石修章
編み物と俳句で日盛りやり過ごす 滝澤泰斗
貝割れ菜出生以前に神宿る    竹内義聿
鉄兜幾度の渡河や蝉時雨     谷口道子
白鳩の一羽は少年広島忌     樽谷寛子
立秋や世間と会わず部屋の中   豊原清明
進捗を確かめに行くかたつむり  新田幸子
青空の青が降ります紅の花    野﨑憲子
胃カメラ飲む金魚鉢の波荒れるごと
                増田暁子
千両青実拭わぬ涙がぽとぽとん 矢野千代子
櫛洗うつくつくぼうし鳴き出した 榎本祐子
             (榎本祐子記)

大阪句会 2020年7月18日

七夕や肥の国水禍ただ拝す    樫本昌博
卵焼き二人のおでこが触れるとき 葛城広光
鶏頭に施肥して夏をやりすごす  小宮豊和
児等よ来よ蟬の緑子翅を干す   白石修章
縺れるは別れ話のホタルかな   滝澤泰斗
至近にありされど遥かなる木槿  竹内義聿
梅雨晴れ間お年寄と蟻の列    谷口道子
小学校の土俵存続大青田     樽谷寛子
地下街でカレーを食べた梅雨の刻 豊原清明
空蝉よりはて面妖な追伸来    新田幸子
小生は風でござると蝸牛     野﨑憲子
夏蝶にあこがれ少女の乱反射   増田暁子
ペンギン君いまにズボンがずり落ちる
               矢野千代子
万緑に鴉つくづく濡れている   榎本祐子
             (榎本祐子記)


 大阪句会 2020年6月20日

ガキの頃プラネタリウムは蚊帳の中
                樫本昌博
リモコンを芝生の上に忘れたる  葛城広光
たんぽぽのような赤ちゃん抱きにけり
                小宮豊和
少年の飛び込む水面合歓の花   白石修章
孫は学習俺は退化や今朝の秋   滝澤泰斗
その場に居合わせただけ花筏共に見る
                竹内義聿
大都会アラート色の入梅(ついり)雲(くも)    谷口道子
ぷくっとアマリリス吉祥天女かな 樽谷寛子
禿げ坊のアイスキャンディー紅き舌
                豊原清明
人に塩振る花折峠を帰り来て   新田幸子
くだけて波よ青水無月の花嫁よ  野﨑憲子
青を漕ぐ背を向く少女の捩り花  増田暁子
愛染堂楊梅千本のしずかさよ  矢野千代子
棕櫚の花仰ぎ夕べのお念仏    榎本祐子
             (榎本祐子記)

大阪句会 2020年5月16日

鈴蘭に蹴躓きたり鈴拾う     樫本昌博
散水車艶艶艶の字を配る     葛城広光
その角を曲がれば別の世の五月  小宮豊和
人絶えて透ける葉桜空のずれ   白石修章
再びの抑留地にて春と逝く    滝澤泰斗
高架電車の地面に百済沈みゆき  竹内義聿
コロナ疲れソファー斜めの人形たち
                谷口道子
怪光を集めて菜の花蝶と化す   樽谷寛子
夏の犬ひょろひょろとして土を食う    
                豊原清明
ステイホーム無聊を託(かこ)ち臍のごま  新田幸子
舌先でつくるシヤボンや蛇の衣  野﨑憲子
ゆびきりの針千本蛇は皮を脱ぐ  増田暁子
青みかん早口ことば競いたる  矢野千代子
ときどきは春蟬のよう泣いてみる 榎本祐子
             (榎本祐子記)

大阪句会 2020年4月18日

菫かな駆け寄りのぼりその先も  樫本昌博
動物の悦び赤いマッチ飛ぶ    葛城広光
桜さくら痴呆が一人立ち尽くす  小宮豊和
友逝くやコロナ籠りの花の雨   白石修章
コロナ禍が戦争の体万愚節    滝澤泰斗
孤独死の爪切りそろえ路地の月  竹内義聿
落花の道湿りの気配に沿いながら 谷口道子
夕映えのぶらんこ金剛山(こんごう)蹴る少女 樽谷寛子
野遊びの恋人残し影広がる    豊原清明
開園ベル河馬はガバリと水を脱ぐ 新田幸子
櫻騒潮騒人騒コロナ騒      野﨑憲子
紅を差す女人の腰や牡丹の芽   増田暁子
実万両くしゃみぽとんと乙訓(おとくに)へ  矢野千代子
囀りの伸びて縮んで生き急ぐ   榎本祐子
             (榎本祐子記)

大阪句会 2020.3.21 

祖母の手も観音さんも白木蓮(はくれん)か  樫本昌博
木の芽時閑職の椅子逆さまに   葛城広光
卵かけごはんまぶしい寒の朝   小宮豊和
涅槃西風悲しいねえと独り言   白石修章
儒者賢者密使早駒やばい口舌   竹内義聿
コロナ禍にやがて悲しき地球冷え 滝澤泰斗
花殻を摘めば冷たき椿かな    谷口道子
梅ひらくように「歎異抄」輪読す 樽谷寛子
うりずんや湿気た聖書開く閉づ  豊原清明
会者定離切子グラスの花薊    新田幸子
囀やブテイツクこまどり閉店前  野﨑憲子
球根植うひらがなかたかなちりばめて
                増田暁子
兜太の忌金剛山(こんごう)稜線太々と   矢野千代子
爪を切る音が桜を咲かすのです  榎本祐子
             (榎本祐子記)

大阪句会 2月15日 

冬帽のほどけそうだよ辛夷蕾   樫本昌博
歯磨き粉ぽとり落として蝸牛   葛城広光
卒業す板の廊下を踏み鳴らし   小宮豊和
受験生きりり髪結う自習室    白石修章
迷惑かけることが生き甲斐かも知れぬ
                竹内義聿
白さ際立つ迷わずずっしり大根焚き
                谷口道子
春手袋百済観音に会いたし    樽谷寛子
春月輝吾は兜太読み耽る     豊原清明
星凍るホットケーキのふ~わふわ 新田幸子
あやかしの大欠伸して雪まろげ  野﨑憲子
霞む比叡山(ひえい)影絵のように友病んで 増田暁子
沢蟹や膝やわらかに湖族われ  矢野千代子
効きすぎの暖房ころんと尾骶骨  榎本祐子
             (榎本祐子記) 

2019年12月21日

山脈に雲影流る行く秋か     樫本昌博
闇落ちの夜に開く桜貝      葛城広光
立枯れの枝の剪定壺中天     白石修章
ネコ動画いいねしてノンキ年の暮れ
                滝澤泰斗
尿瓶携行は兜太の理性汚染の野  竹内義聿
柘榴食ぶかしこまって二人    谷口道子
褞袍着て常宿(やど)に納めし翁面    樽谷寛子
暗窓に鴎の死骸冬の刺      豊原清明
どのレジに並ぼうかしら赤のまま 野﨑憲子
冬帽子見たいものしか見えぬ街  増田暁子
日暮はやし物集女(もずめ)集落はここ  矢野千代子
非戦派や焼芋で臍あたためる   榎本祐子
             (榎本祐子記)

2019年11月16日

脚高蜘蛛日めくり裏で時とめる  樫本昌博
むし米の蒸気冬晴れの鬼瓦    白石修章
クリスマス林檎の皮にピアス刺す 葛城広光
ポプラ枯れ眠りにつかむ抑留墓地 滝澤泰斗
夜更かしの蝉酸欠の工房     竹内義聿
鳶しきり石灯台の冷えて来て   谷口道子
炉開きの香練る指の美しきかな  樽谷寛子
牢屋から冬虫の出て我赤目    豊原清明
深鉢に小芋の煮付帰心逸る    新田幸子
扇ひらけば狼の遠吠え      野﨑憲子
齢人(よわいびと)のおどけ笑いに似て芒   増田暁子
けんかまつり天王山へ曇奔(はし)る  矢野千代子
石蕗の黄の標のありて逝きにけり 榎本祐子
             (榎本祐子記) 

2019年9月21日大阪句会 

手のひらで天道虫とシーソーす  樫本昌博
末の世もすみっこぐらし栗ご飯  白石修章
ヤンキーは制度に不満ゆで卵   葛城広光
定刻に自転車ぴしゃりヘルパー来る
                竹内義聿
終り際なべて天指す百日紅    谷口道子
ふらり来て今朝の挨拶蛇の目蝶  樽谷寛子
八朔や四方八方白き壁      豊原清明
運動会白線ばかりを暮れ残す   新田幸子
ググーポッポ満月かついでくる少女
                野﨑憲子
眠れぬ闇銀河を越える櫓が聞ゆ 増田暁子
麦藁くべて産着干したるここ若狭     
               矢野千代子
脳軟化鰯の干物しゃぶっている  榎本祐子
             (榎本祐子記)

2019年8月17日

蟻達が迷う地面に拡声器        葛城裸時
天の川村深々とデブリ溜まる      白石修章
木槿の花が全開の朝蝉沸き立つ     竹内義聿
台風来浄土へ着けたか「だ骨」さん   谷口道子
鴉の子きらきら貌でおらを呼ぶ     樽谷寛子
八月や魂の宿りを嬉々として      豊原清明
打水や女将に一つ艶ぼくろ       新田幸子
?しぐれ杖のなかほどほの赤し      野﨑憲子
蒜山高原寝入るテントに「ベガ」が射す 増田暁子
べろべろと血を吐きカンナ咲かすのよ  榎本祐子
             (榎本祐子記)

2019年7月20日大阪句会

白鳥が水になったよ白い水      葛城裸時
月天心斜陽の街の盆踊り       白石修章
通函で繋ぐ解体業の夏        竹内義聿
愚痴が回復八十路の暑葉書にウフフ  谷口道子                
雨蛙「YMCA」は踊れまい     樽谷寛子
浮世かな今朝は二度寝の冷し粥    新田幸子
胸のボタン弾けそうなり梅雨の月   野﨑憲子
沖縄の孕む朱色や八月来       増田暁子
鮮やかな唇の色囮鮎         豊原清明
黐の花夕べむんむん煮くずれて    榎本祐子
               (榎本祐子記)

2019年6月15日の概要 大阪句会


綿菓子の香り仄かに夏の雲      葛城裸時
頂にビーコン白し佐渡萱草      白石修章

耄碌自由八十路の通景計り止まず   竹内義聿
新じゃがや股関節屈曲伸ばさねば   谷口道子
なめくじりひよいとベニスへ舟遊び  野﨑憲子
どくだみ咲く青春わっと後悔     増田暁子
浄瑠璃に泪牛丼食べて夏       榎本祐子
                (榎本祐子記)

2019年5月18日の概要 大阪句会

色丹のカールおじさんは田螺      葛城裸時
花水木ままごとのよう友の墓      白石修章
愛妻家飽きもしないで冷奴       小西豊和
令和零年お降(さが)りハレルヤ津々浦々 竹内義聿
椨(たぶ)若葉笑いすぎだよ宇治の山   谷口道子
学校とうあしたの種を播くところ    新田幸子
囀や歩けば歩くほど混沌        野﨑憲子
黄昏草ベンチの隣が空いてます     増田暁子
若気の至り羊蹄を食べ過ぎた      榎本祐子
              (榎本祐子・記)

2019年4月20日 大阪句会の概要

御飯粒雀の卵についている    葛城裸時
平成を咲き収めんと残花かな   白石修章
百代の過客我いま葛橋      竹内義聿
葱坊主丈の凸凹下京区      谷口道子
マカロンは春の色なす天体や   新田幸子
引き潮の沖へ沖へと揚羽蝶    野﨑憲子
春はあけぼのカモメのジョナサン不眠症
                増田暁子
一文字(ひともじ)の重たさ正午(ひる)の時報です 
                矢野千代子
国籍のこと花粉症の鼻かみて   榎本祐子
             (榎本祐子・記)

2019年3月16日 大阪句会の概要

真っ青な身体を風邪と間違った    葛城裸時
下校の児何を捜すや土手青む     白石修章
思い出が木立のように馴染む路地   竹義義聿
「達(だっ)陀帽(たんぼう)戴かせ」への字の口の目が笑う
                  谷口道子
吊革の〇と△春が来た        樽谷寛子
心延(ば)え目高の孵化のゆらぎかな  新田幸子
弥次郎兵衛ぎゅんと傾ぎて晩霞かな  野﨑憲子
温水に洗う食器の未来像       野村だ骨
初ざくら卑弥呼の息根は空耳か    増田暁子
螢烏賊は家来じゃないよ明滅す    矢野千代子
白酒やほたほた昔の足音か      榎本祐子
                (榎本祐子記)

2019年2月16日 大阪句会の概要

なんきんに多分深い海がある     葛城裸時
げんげ田の雲に電報サイキコウ    白石修章
ちんまりとまるで古漬日向ぼこ    小林寿美子
知らんけどな聞いたことやと大阪人  竹内義聿
雪の大原とちもちぜんざいお薦めです 谷口道子
冬木透き九度山沿線はにかむよ    樽谷寛子
荒波や佐渡の世阿弥に紅椿      新田幸子
影法師も小石も風も囀れり      野﨑憲子
すし桶に切って酢めしや春の声    野村だ骨
風花や鉄路に秒(とき)の吹き溜まり  増田暁子
対岸は室津港とう梅ほつほつ     矢野千代子
春月が舐めゆく路上アートの壁    榎本祐子
                (榎本祐子記)

2019年1月9日 大阪句会の概要

昼休み海月のように温かい     葛城裸時
明の春けんけん踊りの踵より    白石修章
望郷や墓に通じる雪の道      滝澤泰斗
卓に水仙鰈からりと骨まで素揚げ  竹内義聿    
膝痛や獅子頭の紅今日はきつすぎ  谷口道子
エプロンは「くまのプーさん」芹を摘む  
                 樽谷寛子
おおかみに出合う男女よ春峠    豊原清明
冬すみれ無音の底の海潮音     野﨑憲子
初夢や海鼠の彈力丸呑に      野村だ骨
白さざん花ざわめく島の診療所   新田幸子
恋はしたたか跋文のごとつもる雪  増田暁子
追従や頬杖のぼる冬の霧      矢野千代子
ペンギンの足のようなる愛探す   榎本祐子
              (榎本祐子記)

2018年12月15日 大阪句会の概要  

神の旅続々殖える塾子供      葛城裸時
昼の月一直線に鼬の子       白石修章
「男と女」ホテル・ノルマンディー秋暮色  
                 滝澤泰斗
吾亦紅大胆なりや三岸節子     竹内義聿
白樺立ち枯れ魁夷ブルーの水鏡   谷口道子
紅葉かつ散るレンズの中で眠る女(ひと)
                 樽谷寛子
旦那衆集う福助の足袋履いて    新田幸子
舌に風乗せて遊んでゐる狐火    野﨑憲子
靴底に熱砂の記憶落ち葉踏む    野村だ骨
左から枯れほんのり山越阿弥陀仏  矢野千代子
大根の干され妙に照れている    榎本祐子
              (榎本祐子記)

2018年11月17日 大阪句会の概要

冬の雨乳のしたたるのと同時      葛城裸時
穭のぶ亡父へ電話の請求書      白石修章
石頭は突然変異ななかまど       小宮豊和
聞け慟哭見よ一面のブタ草を      滝澤泰斗
顔を洗えば髑髏がうごくヒヤシンス   竹内義聿
雲の湿りや亡母の手編みセーターは   谷口道子
地図絵皿周防の国の柚子を盛る     樽谷寛子
花野風かくれんぼの鬼みいつけた    野﨑憲子
曼珠沙華消えた村から又、一人     野村だ骨
茶の花や産着ぬぐよう月の暈(かさ)   増田暁子
荻の声灸点がまだ定まらぬ       矢野千代子
柿の種つるんと呑んで天高し      榎本祐子
               (榎本祐子記)

2018年9月15日 大阪句会の概要

霧はまだとおっていない歯の隙間      葛城裸時
行く春や弛む夕餉の糸電話      白石修章
微香せり白い夜明けの稲の花        小宮豊和
垂直に蠍座モンゴル大とばり        滝澤泰斗
椎茸栽培のように生き延び文句あるか   竹内義聿
秋刀魚その黄色き吻(くち)よ夢のあと  谷口道子
姥百合や声つつぬけの丘の寺        樽谷寛子
確認は歯型の哀れ曼珠沙華         野﨑憲子
座布団の厚さに秋を出迎える        野村だ骨
咳き込んで銀河の雫を見失しなう      増田暁子
送り火やひとりの夜の泡立てる        矢野千代子
擦れ違うちりっと金属質の秋        榎本祐子
                    (榎本祐子記)

スケジュ-ルのお知らせ

スケジュールのお知らせ  関西合同句会 (偶数月の第2土曜日、午後) 2021年12月、2月、4月、6月   休会 海原関西オンライン句(通称 カカオ句会)  2021年12月1日   投句締切 2021年1月10日   ズーム1月句会  2022年1月以降のズーム句会予定...