海原(かいげん)創刊の辞より

海原(かいげん)創刊の辞より
 俳句形式への愛を基本とし、俳諧自由の精神に立つ
           「海原」代表 安 西 篤


2020年12月9日水曜日

スケジュ-ルのお知らせ

スケジュールのお知らせ 

関西合同句会 (偶数月の第2土曜日、午後)

2021年12月、2月、4月、6月   休会

海原関西オンライン句(通称 カカオ句会) 

2021年12月1日   投句締切
2021年1月10日   ズーム1月句会 

2022年1月以降のズーム句会予定
2022年3月6日(投句締切は月1日)、5月3日(投句締切は4月1日)、7月3日(投句締切は6月1日)                  

関西スクール (毎月第2土曜日、午前)

2021年1月以降当分の間 通信教室に変更 (投句締切は月末第4木曜日)
武田伸一先生の全句添削・講評を月初めに受講生各自に郵送。                 

大阪句会 (毎月第3土曜日、午前または午後) 

2020年12月  12月19日(土) 通信句会
       (12月26日ズームによるアフターミーテイング)
2021年1月以降当分の間オンライン句会
   投句締切 第2木曜日正午
   選句締切り 第3木曜日正午
   ズーム句会 第4土曜日午後1時30分から


                                                       

2018年10月2日火曜日

海原の理念

海原(かいげん)の理念
海程の後継誌「海原」の理念について
「海原」代表 安 西 篤
ご承知のように、本年9月 をもって本誌「海程」は終刊となり、その後継誌として、新たに「海原」が10月 に倉1刊 されることになり ました。
海程の終刊は、金子兜太主宰のご高齢による引退にともなうもので、主宰からは後継誌の発行について、すでに容認して頂いているところであります。したがつて「海原」は、「海程」の倉1刊 以来の理念を継承して発足することになります。
では、そもそも「海程」の創刊以来の理念とはなんでしようか。

海原(かいげん)・関西について

 海原(かいげん)・関西について

海原・関西は金子兜太の「海程」を継承した俳句集団である「海原」の関西グループです。
 関西グループでは、関西合同句会、関西スクール、三田句会、大阪句会、びわこ句会、などを定期的に開催しています。
 このサイトでは、関西合同句会、関西スクール、大阪句会についてお知らせします。
他の句会については、随時、リンクを貼っていきます。
 このブログについてのお問合せ、ご連絡は「海原・関西 メールアドレス kaigen.kansai☆gmail.com へ ☆を@に変更して、お願いします。
 
    

関西合同句会

関西合同句会

2か月に1回(偶数月)に関西在住の海原会員をはじめ、東海、中四国、九州、時には米国からの会員が集まり句会を開催しています。
 海原発行人に就任された武田伸一氏にも、海程時代と同様、毎回参加していただいています。

会場 大阪市生涯学習センター研修室または会議室
時間 13:00~17:00
会費 1000円

    世話人     若森京子  
         矢野千代子    
         榎本祐子  (広報・連絡係)

当分の間、オンラインで海原関西オンライン句会(略称カカオ句会)として開催しています。詳細はブログ開設者までお問合せください。
           

2018年10月1日月曜日

2018年6月関西合同句会抜粋

関西合同句会 

2019年12月14日

兄はムクロジ少しの酒に酔うて冬 大西健司
衣食住旅の空寝の寒暮かな    太田順子
冬の海卑弥呼が昇っていきました 葛城広光
壊れるかも知れぬ微笑み冬薔薇  河田青峰
冬ざれて無職省略的な居間    久保智恵
白い息大きく吐いて終電車    上月さやこ
わが胸には塵のなかれよ日記買う 坂本久刀
電飾やサンタ流るる抽選会    白石修章
月光浴びドラキュラドラキュラ千曲川
                武田伸一
枇杷の花芽日差へモコモコ元気です
                谷口道子
どかーんと蜜柑文左衛門の船が来た
                樽谷寛子
人間(じんかん)に育つ飽食飢餓も又     新田幸子
あんなに頷いて凩の影法師    野﨑憲子
十二月八日写真の母は竹槍もつ  増田暁子
青竹を斜め切りする年用意    村上紀子
ねんねこよ晩年の藍のさすらい  若森京子
唱和して今日の片隅木の実降る  榎本祐子
             (榎本祐子記)


22019年6月8日 関西合同句会抜粋
旱前乳房を海に浸したる         葛城裸時
観覧車ふっと羽化するオオムラサキ    河田青峰
あえかなる白きざわめき明易し      小宮豊和
滝仰ぐ未完の夢を追い求め        坂本久刀
茅花の穂遠く淡路に落暉かな       白石修章
声に出せば兜太師遠し茄子の馬      武田伸一
事故ありし水辺真白き立葵        谷口道子
人体の先っぽ全て渦薄暑         月野ぽぽな
雨やどりでんでん虫の姉妹(あねいもと)  野﨑憲子
夏野菜フライパンの中は染物屋      増田暁子
街薄暑サンダル履きのソクラテス     村上紀子
ねじあやめ脇をゆるめる寂寞感      若森京子
                (榎本祐子・記)

関西合同句会抜粋 2019年4月11日

お新香風に乗って飛んじゃった       葛城裸時
囀や少年ばかり声変わり          河田青峰
闇ぬくし気配は花か立ちすくむ       小宮豊和
一山に命の祈り朝桜            坂本久刀
チューリップ赤黄と並ぶふっくらゆかい   白石修章
詩の友のあらかたは老い春の風       武田伸一
花降るや合わせる掌にも樹木墓       谷口道子
すみれ野や遠流のごとく母の影       野﨑憲子
春キャベツ男ぎらいとうわさあり      増田暁子
山笑う列車の窓から見る山河        松本 孜
擂粉木を持って囀り聞いている       榎本祐子
                   (榎本祐子記)

関西合同句会抜粋 2019年2月9日 

降る雪や咢堂像の口に髭        稲葉千尋
オムレツがさみしい無帽の帰還かな   大西健司
ポチ袋に丹波哲郎住んでいる      葛城裸時
標本は春立つよう本閉ずよう      河田清峰
黒人霊歌諸手で掴む冬の空       小西瞬火
寒林に入り聴覚と化す全身       坂本久刀
春立やポップコーンのいづこより    白石修章
平家の裔雪解雫のしきりなり      武田伸一
ひとはひとの匂いを漂流春岬      竹本仰
冬田延々ぐらぐらの奥歯        谷口道子
冬籠り『戦艦武蔵』伏せしまま     樽谷寛子
梅三分眉引くときの他人かな      増田暁子
山眠る次なる命育みて         松本孜
冬おぼろいま貨物駅なる百済(くだら)  矢野千代子
如月や机上にやわらかい座礁      若森京子
嘘ひとつ蝋梅の涙と思う        榎本祐子
                 (榎本祐子記)

関西合同句会抜粋 2018年12月8日 

小春日や霊安室の壁に傷        大西健司
広告の囁きあって冬紅葉        葛城裸時
綱吉も天武も突く紅葉鍋        河田清峰
生ききるは日々一万歩水の秋      坂本久刀
一葉忌一日笑わず過ぎにけり      武田伸一
木枯し一号踏ん張る赤のハイヒール   谷口道子
ドローン飛ぶ粟田口です冬紅葉     樽谷寛子
あやかしの尻尾残して子狐よ      新田幸子
言吃れば凩の日溜り          野﨑憲子
十二月八日腓返りを繰り返す      増田暁子
朝寒やそれぞれ忙し始発前       松本孜
攻め窯は太古の海や草紅葉       村上紀子
みずかきのくつろいでおり落葉期    矢野千代子
秩父はるか情死のように山茶花散る   若森京子
もう人を愛さず鶏頭と立っている    榎本祐子
                 (榎本祐子記)

関西合同句会抜粋 2018年10月13日

草笛のそこより藍のしたたれり      大西健司
楡の花小林抹茶(まっさ)馬に乗る     葛城裸時
菊を焚く昼のこめかみ煙るなり      小西瞬夏
聖護院大根が人気関東煮(だき)      小宮豊和
武庫川の水源に触れ鰯雲         坂本久刀
ただの年寄りされど人間菊膾       武田伸一
笑み零る新米の泡良く膨れ        谷口道子
炎帝や飯食足らぬ牛の舌         樽谷寛子
深海にいのちありけり黒葡萄       長尾向季
野に在りて時を得たりと曼珠沙華     新田幸子
もろ肌を脱いで秋蛇大笑す        野﨑憲子
すべりひゆはは存命の日の足音(あおと)  野田信章
蔓うめもどきゆっくり老いる振りをして  若森京子
置き去りのわたしもみずるばかりなり   榎本祐子
                  (榎本祐子記) 

2018年6月9日 関西合同句会の概要

檀家なき古刹お僧や新茶汲む      村上紀子
雷は電池並べて個性的         葛城裸時
毛虫焼く今ならわかる捨身かな     増田暁子
ひさびさの茶杓削りよおらが春     樽谷寛子
通夜の場に見知らぬ女虎が雨      長尾向季
人焼く間つばなも雲も流されて     榎本祐子
六月多感なり幻聴が朝夕に       矢野千代子
青梅を捥ぐはるかより青馬一頭     若森京子
鉄塔に飛び交う声や夏兆す       坂本久刀
生きもののまばたきしずか炎天下    月野ぽぽな
かたつむり飢えたる風の方を向く    武田伸一
恐縮です丸まる性です団子虫      新田幸子
明易し浴衣の父母の萎え著く      小宮豊和
人さらいくるらしくちなわつるむ夜は  大西健司
誘蛾灯その夜の縁に鍵落とし      小西瞬夏
恐縮です丸まる性です団子虫      新田幸子
柿若葉音頭とりませ兜太師よ      谷口道子

                                                                                 (谷口道子記)



2018年9月30日日曜日

関西スクール抜粋

海原関西スクール2023年6月(通信講座)
お陽さまに核融合か夏薊  村上紀子
無頼派なる男ありけり蓬餅  白石司子
白牡丹一輪にして小宇宙  太田順子
蛇の衣生家はとっくに誰も居ず  増田暁子
満更でもなく菠薐草茹であがる  榎本祐子
エンジン音だけに霾る茅渟の海  白石修章
三輪山遠景花に天平観世音(聖林寺)  樽谷宗寛
知らぬ間に燕の大家となりし母  上月さやこ
人が怖い日躑躅明かりに眠りたし  榎本祐子
雨上がる水満水の田に蛙  松本孜
天兵の裔住む郷よ五條夏  江森厚
沙羅の花ひざ抱く少女の翳りあり  増田暁子
のど輪攻め躱し勝利の柏餅  白石修章
守宮来ているおふざけ夫のストレッチ  谷口道子
(谷口道子記)


海原関西スクール2023年4月(通信講座)

ブレイキンくるくるボーイに風光る  江森厚
チーズピザ蛸連続の白昼夢  葛城広光
春の夜空白の心だけあり  上月さやこ
春炬燵影絵のような祖母の背  増田暁子
春疾風空き家になりし扉押す  村上紀子
うかうかと獏と朝寝をしてゐたる  白石司子
てらてらと春泥にわたくしの顔  榎本祐子
(谷口道子記)


海原関西スクール2023年3月(通信講座)

すかんぽを噛めば母郷の遠くなる  白石司子
草餅や二つと同じ顔はなし  上月さやこ
祖国防衛戦士や水盤の残り雪  谷口道子
天空の一艘囃し田の雲雀  榎本祐子
環濠の町や全き春霞  江森厚
無住寺にトンカチの音寒明ける  樽谷宗寛
きさらぎの君の荒野を振り返れ  白石司子
白梅咲いて大木に兜太先生  谷口道子
ものの芽や兄を超えし弟の背  増田暁子
          (谷口道子記)


海原関西スクール2023年2月(通信講座)

神殿に大蛇退治の舞を見て  松本孜
深雪晴れ地図になき名のあさぢ山 村上紀子
赤光の海へと還る冬の雁  白石司子
冬木立個性脱ぎ捨て立ちつくす  太田順子
ときに冬鳥の貌を被りて帰宅の子  榎本祐子  
遊園地座椅子の方が高いかな  葛城広光
音を吸ひ木立深々山始め  白石修章
配り餅して笑顔絶やさぬ山家妻  樽谷宗寛
若菜摘み待つ人のいる夕餉かな  上月さやこ
穫りのこしの冬郁子食むや夜久野峠  樫本昌博  
句と遊ぶ深夜私の一人旅  松本孜
枯山の眉目を過る鳥の影  榎本祐子
駱駝毛布父の人生匂い来る  増田暁子
紐育や公園馬車へ雪しんしん  江森厚
お包みのモゴモゴするや水仙花  樫本昌博 
冬空に目玉土門拳写真集  白石司子
                       (谷口道子記)


海原関西スクール2023年1月(通信講座)

コンマスをプロに換えしや第九立つ  江森厚
寒月や父待つ姉妹の数え歌  上月さや子
古希霜夜なほ追いかけるフッサール  白石修章
感情のひだるきときの楓紅葉  榎本祐子
いまさらの官能の帯ちり紅葉  増田暁子
己(し)が影を呼ぶ声か夜の木枯か   白石司子
                 (谷口道子記)


海原関西スクール12月(通信講座)
 海原関西スクール12月(通信講座)
切餅やフォッサマグナの東側  江森厚
日月(じつげつ)の屏風絵拝す文化の日(金剛寺にて)  樽谷宗寛
初時雨話し言葉もゆるやかに   太田順子
荒星やざらざら言葉こぼれおり  白石司子
発射台見せる勤労感謝の日   村上紀子
転生てふ朝のひかり銀杏降る  白石司子 
梟を高速道路に並べけり    葛城広光
僕は南瓜草間弥生のアイドルです  樽谷宗寛
ユダ記見ず十一月の古書の   江森厚
秋夕焼け一人ぼっちの道着の子  谷口道子
 なお、梟をの句は読み手を詩の世界に運んでくれるが、火傷の危険性あり、真似しないようにと講師からの注意書き。
            (谷口道子記)


海原関西スクール11月(通信講座)

仲間はずれのよう茸の山へ行ったきり  榎本祐子
言の葉はたまゆらのごと冬銀河  白石司子
の花精一杯のそよぎかな  太田順子
よ母よ海へ海へと 白石司子
たいものしか見ず紅葉且つ散る  榎本祐子
神主とフェリーを降りる新御輿  樽谷宗寛
寒やさっと引き抜くっしつけ糸  増田暁子
         (谷口道子記)


海原関西スクール2022年10月(通信講座)

存分に鈴虫の声夜の沈黙  白石修章  
柚味噌濃しフォッサマグナの向こう  江森厚  
風鐸の重くなりゆく秋の雨  上月さや子  
曼珠沙華己が湖より昏れてゆく  白石司子  
玉虫厨子羽音幾千時越えて  樽谷宗寛  
怺えきれず母は銀河を漕いでゆく  榎本祐子  
彼岸花すべてのしがらみ切る雄蕊  谷口道子  
ねむる児の掌に草の花すっぱい香  増田暁子  
鳥渡る番号だけの墓並び  白石司子  
瞑想の小五の映画予告編  葛城広光  
秋さびし街角ピアノのヘイジュード  樫本昌博  
月光や甍の底に沁み通る  江森厚  
蛍掌に韋駄天のごと勇む妣 樽谷宗寛  
ふと寄りし花屋に芒買いにけり  榎本祐子
王の葬象も随うゆるき隊列  谷口道子
          (谷口道子記)


海原関西スクール2022年9月(通信講座)

天皇の英断と知る終戦日  松本孜  
二百十日軍馬は海を還らざる  白石司子  
口中のほおずき鳴らし返事する  榎本祐子  
夕蝉や母の百年えらき  村上紀子  
父の手を真似て文(ふみ)書く盆の月  上月さやこ  
阿修羅像朱の眦にあぶれ蚊  白石司子  
備忘録微かな音する扇風機  白石修章
          (谷口道子記)

関西スクール2022年7月(通信講座)

原語家の郷土にポスター夏          村上紀子  
鈴なりの言葉立夏に立ち往生        太田順子  
汽車去りてドップラー音と虹遺す  江森厚  
他を寄せぬ青鷺われも知らんぷり  増田暁子  
良く生きた眠る兜太に若葉風        白石修章  
北斎の侘寝上手よ山滴る                樽谷宗寛   
英訳の農業遺産豆を蒔く              村上紀子  
夏の雨狆なら許せる肩の上           樽谷宗寛
 虹の水郷たしかなリズムの櫓が踊る 増田暁子  
指先は湖底の匂い蜻蛉生る             白石司子  
伊方炉を停めし水母や伊予水軍   江森厚  
まくなぎの見送り来る野上駅        白石修章
梅雨入りやジーンズの穴の若い肌  谷口道子
                      (谷口道子記)


海原関西スクール2022年6月(通信講座)

関ヶ原一次資料の染みと紙魚    江森厚
去年の化石今年の冷奴               葛城広光
梅は実に生家の更地の孤月かな 増田暁子
守宮鳴くやまと言葉のように鳴く 榎本祐子
山寺に酢の香ながれる青山椒      村上紀子
春の雷鴉に餌やるおばあさん      樫本昌博
一筆の横向き達磨武蔵の忌   樽谷宗寛
ごきぶりの逃げ足わたしの言い逃れ   増田暁子
獄(ひとや)とも茅花あかりの仮住まい 榎本祐子
言の葉も吹き返されて青嵐    上月さやこ
母の日や母の小さき頭を梳く   谷口道子
         (谷口道子記)


海原関西スクール令和四年五月(通信講座)


柳絮とぶなんだかんだとこの平穏    増田暁子
指先は真昼の昏さほうほたる      白石司子
ぼうたんの首切る仕事の男かな     榎本祐子
受難節防空壕に滑り台         江森厚
夜桜や俺も焼かれる痛痒い       白石修章
正午という隙間すっぽり入道雲     村上舞香
しじみ汁鍋蓋あげて郷がくる      樫本昌博
春園は指が無限に伸びる園       葛城広光
聞き役の母無し青葉闇深し       増田暁子
微笑みも憂いの渦の薄暑かな      太田順子
虎杖を嚙む音欲望も音たてて      榎本祐子
己惚れをときには見せて藤の花     村上紀子
終戦日あの日河原で魚漁り       松本孜
                 (谷口道子記)


海原関西スクール令和四年四月(通信講座)

風光る宇宙の始まりは無音                村上舞香
賢しらな少年もいて雛あられ             榎本祐子
春の水脈生命の流れを描くという       増田暁子
亀泳ぐ手と足てんで春の水底             白石修章
東風の中血の付きし鳥の羽根             村上紀子
生と死のつながってゆく春夕焼          白石司子
武悪面春風を工房へ通す         樽谷宗寛
けふ彼岸妣の牡丹餅の大きけり     樫本昌博
灯台守便りの余白に百千鳥       増田暁子
千曲川にすうっと流れる鍵の音     葛城広光
もったりと夕焼け含んだ六畳      村上舞香
春水の言葉に両手差し入れる      榎本祐子
家庭科の妻の出張目刺し焼く      江森厚
                  谷口道子記



海原関西スクール令和四年三月(通信講座)


オオムラサキのごと結弦の「天と地と」  樽谷宋寛
牡丹の芽朱い吐息というみやび               増田暁子
たましいのゆきかうところ白ふくろう      白石司子
ややこしく出来た人間鳥交る                  葛城広光
埒もなき夢を紡ぎて桃の花                     榎本祐子
雪柳葉芽か花芽か待てばよし      樫本晶博
寒風や人影の無い村疾る      松本孜
鳥帰るゲルニカに傷数多なり      白石司子
日常や底光りして春の霧        太田順子
着ぶくれてドクターヘリへ駆け寄る娘  村上紀子
父帰る一人膳にて薬喰         上月さや子
傍に来し片足だちするダイサギよ    樫本晶博
                  谷口道子記



海原関西スクール令和四年二月(通信講座)


辛亥の革命未だ蜜柑剥く        江森厚
咳ひとつ自分を解放するために     増田暁子
能面の男の囲む焚火かな        白石司子
餅を焼く刺青のように顔の皺      榎本祐子
深雪晴両手広げて飛ぶあそび      村上紀子
人日や人間臭き犬の貌                           増田暁子
年の豆患難辛苦を腑に落とし      上月さや子
雪しゃんしゃんゆずの香りの風呂に入り 松本孜
痴け空間かも薄氷の向こう側      谷口道子
                谷口道子記


海原関西スクール令和四年1月(通信講座)


聖母像ひかりの中に山眠る      白石司子
ものの芽や季節背負って快快     太田順子
歳晩の不明者名簿奴の居り      白石修章
荒淫の日輪渺渺と冬の海       榎本祐子
ふらここの速度は胎動の記憶     村上舞香
親指で布団押したら外は凪      葛城広光
澄み渡る天に綿虫湧き出ずる     江森厚
初雪や辛抱強く山坐る        村上紀子
雪踏や僧待つ母の枕経        樫本晶博
釦ひとつひとつ外して鵙の贄     榎本祐子
おつかいの空はいつも 水仙     葛城広光
賑わいしスマホの中の歳の市     上月さや子
踏切の向こう側にいるこがらし    白石司子
木枯しや木槿の種の飛ぶ準備     樫本晶博
陸亀の寄り合い歳末のリハビリ室   谷口道子        
                                   谷口道子記 



海原関西スクール令和三年十二月(通信講座)


開戦日ブーゲンビリア咲き乱れ    江守厚
薬湯に浸り足腰ゆるめけり      松本孜
オリオンを指で結びしエピローグ   上月さや子
登高や立山曼陀羅胸に秘め      樽谷宋寛
教室という冬ざれの海がある     白石司子
しごきては南天の実を投げている   村上紀子
祖母不在とうとう菊も焚かれけり   上月さや子
バーボンの小瓶忍ばすインバネス   江守厚
枯れを急く風にたてがみ梳かれけり  榎本祐子
つるし柿土塀の村は眠り入る     増田暁子
にこやかに逝きて奥多摩深紅葉    白石修章
ハレの日も菊の名人束ね髪      村上紀子
白(しろ)虎(とら)尾(のお)草ウェストン碑拭いおり
                  樽谷宋寛
極月の岸の渇きよ少年よ       白石司子
不自由な自由吊し柿吊るされて    榎本祐子
公園に誰もいなくて脳死する     葛城広光
冬夕焼海面は皮膚に似てきて     村上舞香
大徳利廻る寄り合い村祭り      谷口道子
                (谷口道子記)




関西スクール令和三年十一月


芋茎(ずいき)干す大笊小ざる持ち寄りて 
                  樽谷宋寛
くろぐろと二百十日の馬眠る     白石司子
花野風見えつ隠れつする子らよ    上月さや子
草の絮言葉のとどかぬところへと   榎本祐子
葱甘くなるころ山へ罠かける     村上紀子
旅枕すでにこうろぎ鳴いており    白石修章
不即不離三本仕立て糸菊よ      樫本晶博
雁が音や能面の嘆きは知らず     村上紀子
目借り時数十本の目薬や       葛城広光
鶏頭の焔気迷いを叱咤され      増田暁子
小鳥くるオレンジ色に髪染めて    榎本祐子
虫すだく男の美学なる闇に      白石司子
長き夜の水にならず鳥にならず    村上舞香
辻褄の動く言い訳「っす体」で    谷口道子
                 谷口道子記


海原関西スクール  2021年10月(通信教室)

七夕に配管すると管光る      葛城広光
朝顔に巻き付かれたる腕かな  榎本祐子
父の時計二百十日の音がする  白石司子
掃苔や妻と二人で線香上ぐ    松本孜
城垣を登った記憶秋の蛇      村上紀子
新涼のページをめくる波の音  白石司子
一輪の曼珠沙華さえ火のごとし  上月さや子
                     (谷口道子記)     


関西スクール 2021年9月(通信教室)

  (2021年9月から通信教室が再開。以下の句は先生の評価が高かった句です。参加希望者はいつからでも参加できますので、ご相談下さい。)


蛇衣を脱ぐに躰を震わせる          榎本祐子
塗り重ねてゆく原色ヒロシマ忌      白石司子
能面の泥眼に謎小鳥来る               村上紀子
ふくれつら除菌流行りの晩夏かな   太田順子
コロナ騒ぎ六日の蝉の後ずさり      白石修章
大空へ百日紅情の隅の剛(こわ)きもの   谷口道子
絶対的味方だったな盂蘭盆会         白石修章
             (谷口道子記)        





関西スクール2021年4月10日(通信教室)


少年の項かなしき袋掛       白石司子
トラックニガンダムニンギヨウハルノカゼ   樽谷寛子                                   
身の闇に走る影ありお水取り    増田暁子
結び目の緩くて春の人肌よ     榎本祐子
弥次郎兵衛ギュンと傾ぎて晩霞かな 野崎憲子
樹々芽吹くコロナ無縁の田舎道   松本孜
花を見る時おずおずと手を放す   村上紀子
菜の花や四明岳の裾広し      谷口道子
三点でゲームが終わる初日の出   葛城広光
             (谷口道子記)





関西スクール2021年3月13日(通信教室)


花かたかご揺れているのはわが地平    白石司子
すきだよとかな字の栞窓は雪       白石修章
花の冷かけこむ寺の唱歌かな       太田順子
鳥帰る廊下のリハビリこころ急く     増田暁子
産声がはや立ち上る駿馬の血       小宮豊和
ふらここの軋みや昨日を揺り戻す     榎本祐子
絵手紙の冬の鸛来し地酒買ふ       樫本昌博
ほろほろと遠き家路の春の宵       上月さやこ
春一番ドアー開くたびに除菌せり    村上紀子
冬桜の満開は寂しさ伴いて       谷口道子
底がある静寂だ底風車         葛城広光
                  (谷口道子記)

関西スクール 2021年2月13日(通信教室)

昨日わたしは風花になったと 鬼   野崎憲子
斜陽族椿の飾り大袈裟に       葛城広光
鳩の胸天使の羽根に変わってる    葛城広光
葉牡丹くすくす少女のようにかな      樽谷寛子
鈴つけて卒園登山拍手かな      太田順子
オンライン窓つぎつぎと風花す    白石司子
薄氷は踏むべし青春燦然と      白石司子
厚顔の小倉の鼬寝たふりか  (上階からの漏音) 白石修章
ファインダーの母の眼しぐれる白寿かな  増田暁子
終電車窓に映りし雪女郎       上月さやこ
こんこんと磐山に水寒椿       村上紀子
ことさらに「希望」思うや水仙花   谷口道子
はるかな空あるかなきかの春を追ふ  小宮豊和
睦むとき冬の金魚が翻る       榎本祐子
                                  (谷口道子記)

関西スクール    2020年1月14日
寒波くる人生苦しく山静か     坂本久刀
大年の猫と戯むる車椅子       村上紀子
限界集落海市の邑をゆくごとく 白石司子
婆ちゃんが青かびけずる鏡開   増田暁子
鯛の粗突き令和も暮れにけり   白石修章
冬の霧立ちこぎで消ゆジーパンの腰
                             谷口道子
君の手が梳く黒髪に寒椿       上月さやこ
一月の光ふくらむ木匠館(川上村)
                             樽谷寛子
地吹雪や体を病めば日々は旅   坂本久刀
老姉妹語らううちに去年今年   金岡純子
人日や己が両手で頬たたく     村上紀子
裁断す樹氷の育つ夜の音       榎本祐子
落つばき紅い布団の迷宮事件   増田暁子
大柘榴食ぶかしこまって二人   谷口道子
消灯の炉なる種(たね)火や遠雪崩
                             小宮豊和
元気です父に告ぐ日の雪見草   上月さやこ
          (谷口道子記)



関西スクール 2020年12月19日(通信教室) 


衣装箱きれいに貼って十二月      樽谷寛子
田はビルに淋しからずや寒雀      太田順子
月冴ゆる歩幅広げて近未来       太田順子
秋時雨名もなき鳥の凛として      上月さやこ
手に触れず釣り銭もらう十二月     村上紀子
農の血が波打つ野菜みずみずし         松本孜
奥歯抜くふと荒野に佇つ狐              増田暁子
前頭葉とろりと炙り古日記              白石修章
触れもせで計る体温社会鍋              白石修章
冬椿日常のかけら消えてゆく            坂本久刀
青年論氷柱太るがごとく純              白石司子
耳裏で蠢く言葉日向ぼこ               榎本祐子
かまどうま厨の蕎麦の香りけり          小宮豊和
西馬音内踊り静かに更ける月の舟        谷口道子
                                          谷口道子記




関西スクール 2020年11月14日(通信教室)


宝塚の色なき風や防犯パト        坂本久人
喉飴はエモいかぴえんパオン      葛城広光
老白髪戦中戦後の便りみて       松本孜
帰国娘のたっての所望庭の柿     村上紀子
秋の蝶自動ドーアのガラス越し    村上紀子
大根干すわだつみの声となるまで  白石司子
鬼火殖ゆるごと人体にウイルス    白石司子
満月に馬路村在り投宿す          樽谷寛子
高齢者てふ自覚足裏へ末枯野      白石修章
柿羊羹口実にして友来たり        上月さやこ
寄席はねし赤提灯の夜寒かな      上月さやこ
頬を刺す雨を楽しむ京時雨        谷口道子
筋肉も動脈もあり欅枯る          小宮豊和
青檸檬小鳥のように渡される      榎本祐子
                   (谷口道子記)



関西スクール 2020年10月17日(通信教室)


銀杏の降る夜なり地に言葉満ち   白石司子
暗闇を剥がしはじめるちちろかな  白石司子
疑うといつもパジャマを着る私   葛城広光
芋粥は小数点のようなもの     葛城広光
負けし子は早稲の香の中一つ星   白石修章
忘却の音色は深く乱れ萩      太田順子
おんぶばった母を泣かせし噂の村  増田暁子
散髪屋枝豆売りの札上げる     村上紀子
我が友の与論島(よろん)憲法座に新酒   樽谷寛子
コスモスの戦げば戦ぐほど夜明け  野崎憲子
コロナ禍を黙し愁思の波の音    坂本久人
木通の実半分ごっこの帰り道    上月さやこ
方位盤ふと白百合の崩れあり    桂凜火
夏果てのおさらいのよう耳鳴りす  榎本祐子
機械化に田は乾し上げて蚯蚓鳴く  松本孜
世間の闇吸うて来たらし秋揚羽  谷口道子
黄落の森姿無き影ながる      小宮豊和
              (谷口道子記)


関西スクール 令和二年九月十二日(通信教室)   

八月やいくさならぬと祖母の       太田順子
手のひらに銀河と書いて握りしめ     太田順子
水銀のように団扇光る刻         葛城広光
コロナ禍に負けず丹波の秋稔る      松本孜
トラウマのところどころに鹿の声     榎本祐子
老鶯の鳴く山畑や吾も老い        坂本久人
コロナ禍や時計草の影ゆらぎ継ぐ     坂本久人
新涼や風の途切れに地の匂い       白石修章
旅立ちし駅は無人に緋のカンナ      白石修章
銀河濃し紡錘形に眠る島(人間魚雷「回天の島)  白石司子
百日紅旧家の門の格醒ます        谷口道子
酷暑の一歩すでに私は「ぐでたま」に   谷口道子
銀河ふる稜線人は鈍(に)色(び)の中    増田暁子
労農の耳目に哀し牛蛙          樽谷寛子
白南風が薄物の母巻きしめる       小宮豊和
白鳥のだみ声帰還つげにけり       小宮豊和
                    (谷口道子記)                  



関西スクール 令和二年七月十一日(通信教室)

森女に甘える一休山笑う            樽谷寛子
夜の川腹に響くや牛蛙             松本 孜
梅雨寒やヒールにからむ捨てマスク  谷口道子
梅雨寒や寺の茶畑刈り揃う           村上紀子
深深と積もるコロナ禍大祓え         太田順子
なよよかや白い夜明けの稲の花    小宮豊和
紫陽花の萼に宿りし夜の雨       上月さやこ
うたた寝の夢を追いこす夏至の夜  上月さやこ
朝焼は賛美歌のごと父母のごと     白石司子
人間(じんかん)にウイルス紫陽花に日が当たる 榎本祐子
笛に息いま空蝉になる途中           榎本祐子
黒南風に雲読む卑弥呼の吊眼かな  白石修章
片陰ゆく防犯巡視山の街            坂本久人
ゆうやけこやけそして僕等のホームタウン  増田暁子


関西スクール 令和二年六月十三日(通信教室)  


春の下駄みたいな形に水へこむ      葛城広光
青嵐古刹の境内吹きめぐる              樽谷寛子
紫陽花や廃墟の隅で自己主張          松本 孜
想念の箱かな紅い夾竹桃                 太田順子
明日がいい今日の私に散華かな    太田順子
驟雨なり我がてのひらに父母に    白石司子
紫陽花や手洗い借りる無人駅        村上紀子
過疎なれど名医住みたり花菖蒲    村上紀子
たんぽぽのような赤ちゃん抱きにけり   小宮豊和
コロナよ鎮まれ泰山木の花ひらく   野崎憲子
鼻唄に合わせて新ジャガ炒る夕べ   上月さやこ
静寂に星を浮かべる代田かな       上月さやこ
新緑の朝の沈殿白きランナー       白石修章
郭公の託卵母は白寿に近くなり  増田暁子
明日へのきりのない夢山笑う     坂本久人
にぎやかに位牌の金文字春が行く   榎本祐子
山清水クエクエコンとタゴガエル
  (タゴガエルは赤ガエルの仲間だが山に響く大きい声で鳴く)谷口道子



関西スクール 令和二年五月九日(通信教室)


赤ん坊耳だけ大きくつくられて   葛城広光
迷路かな手帳の中の五月尽     太田順子
春は散歩寄り径近路まわり道    樽谷寛子
一揆の村過ぎしより蜂の唸り    白石司子
筆談の余白に蝶のいる真昼     白石司子
令和の世先は試練の新コロナ    松本 孜
戦後史を図書から拾う春炬燵    松本 孜
西行忌水面(みずも)を走る雲一片  坂本久刀
桜さくら痴呆が一人立ち尽くす   小宮豊和
約束の再演中止藤の花       村上紀子
雉と出くわす山上憶良かな     榎本祐子
つくしんぼ人に逸(はぐ)れてしまいけり  榎本祐子
亀鳴くや時に委ねて鹿苑寺     白石修章
幼き日蓮花を編みし淡き恋     上月さやこ
牡丹の芽祖母は華やぎ語らずに   増田暁子
色褪せのコロナマスクや空が薹立つ 谷口道子


関西スクール 

関西スクール 令和二年四月十一日(通信教室)
カッコ内は講師の評
種案山子婆の水筒肩にかけ    樽谷寛子
秋の川おんぬおんぬと音がする 葛城広光(このオノマトペは◎)
コロナ騒ぎ冴え返る田に老一人  松本 孜
鯨噴く夜なり海は青を謳い   白石司子(心象風景だが、ありありと景が見えて◎)
雪の回廊花道とも道行とも   白石司子
退職す分水嶺は雪ながら    小宮豊和
春はあけぼのひよこの大群生まれ出る  小宮豊和
六甲や春には春の怪気炎     太田順子(怪気炎はさもありなんと納得。なかなかです)
春星に懐中電灯まっしぐら   太田順子
句をひねる心の文字や風光る  坂本久刀
うぐいすのケキョの裏声媚薬なり 増田暁子(媚薬と断ずるは快挙)
囀や臨月の胎児(こ)がキックする 増田暁子(囀の季語があっての極上の一句)
新コロナ遊び上手の子ら公園   金岡純子
陽炎やコンテナ昇る巨大船    白石修章
葉裏よりふとさよならと初蝶   白石修章
窓側で自粛してをり花の雨    村上紀子
考える葦の若葉を風揺する    村上紀子(自然現象と人間の存在感を捉え、スケールが大きい)
ぎざぎざの己が影あり茎立ちぬ  榎本祐子(取り合わせ◎。茎立ちぬが抜群に良い)
コロナ禍やマスクの紐がからみつく  谷口道子
梅一輪濡れて寂しさまさりけり  上月さやこ(きっちり表現できている)
戯れに手と手を結ぶ夕霞     上月さやこ(恋人直前の気持ちを具体化し、うまい)

 (2020年3月は新型コロナを勘案して、休講としました)


関西スクール 令和2年2月8日
果てしなきあなたへの道冬銀河     上月さやこ
焼き鳥屋仮面だけになった人      葛城広光
枯野原父母という遠き汽笛       白石司子
賀状くれし友大寒に送るとは      金岡純子
追憶の波紋を残す初景色        坂本久刀
ボス猿に発信器付け吹きさらし     村上紀子
芹なずなていねいに生きて老い白む   増田暁子
日に九里けふは葛城山(かつらぎ)猪かけて  樽谷寛子
山眠る次なる命育みて         松本孜
寒鮒や流しに光る鱗とり        白石修章
年賀エアメール夫君の返信妻逝きしと  金岡純子
杖とする古人の影や大和冴ゆ      阪本久刀
別の世の音重なり来(く)寒夜なる      小宮豊和
日本はマグマの宮よ梅ひらく      野崎憲子
鋤く人とかすかに離れ寒鴉       村上紀子
余寒なほ内耳にジェラシーの微音    増田暁子
雁木坂下れば城の梅が香よ       樽谷寛子
沈丁花二〇歳の日日昭和かな      太田順子
春山茶花モガの母がふっと現る     谷口道子
                 (谷口道子記)
関西スクール    2020年1月14日
講師からの高評価の句
寒波くる人生苦しく山静か      坂本久刀
大年の猫と戯むる車椅子         村上紀子
限界集落海市の邑をゆくごとく  白石司子
婆ちゃんが青かびけずる鏡開     増田暁子
鯛の粗突き令和も暮れにけり     白石修章
冬の霧立ちこぎで消ゆジーパンの腰
                                  谷口道子
君の手が梳く黒髪に寒椿         上月さやこ
一月の光ふくらむ木匠館(川上村)
                                            樽谷寛子
地吹雪や体を病めば日々は旅     坂本久刀
老姉妹語らううちに去年今年     金岡純子
人日や己が両手で頬たたく        村上紀子
裁断す樹氷の育つ夜の音           榎本祐子
落つばき紅い布団の迷宮事件     増田暁子
大柘榴食ぶかしこまって二人     谷口道子
消灯の炉なる種(たね)火や遠雪崩
                                          小宮豊和
元気です父に告ぐ日の雪見草   上月さやこ

講師の説明

「婆ちゃんが」の句「鏡開婆ちゃん青かびけずってる」と動作に焦点を。
「鯛の粗」の句「鯛の粗突つき令和の木の葉髪」など具体物で。
「一月の」の句「一月の光ふくらむ奥吉野」等多くの人が連想可能な地名で。
「裁断す」の句、裁断すが何を裁断しているのか不明、布を断つなどと。
「元気です」の句、雪見草を雪間草に(季感が合わない)。



関西スクール  令和元年12月14日
講師の高評価を得た句、並びに講師の注釈

舞台終えし頬にひんやり冬の虹  金岡純子
  (キレがあればより広がる)
てのひらをこぼるる刻よ冬すみれ  野崎憲子
  (冬すみれが聞いている)
冬の月白さをまして君は来ず  上月さやこ
  (上五、下五を入れ替える) 
廃校の庭精気漲る落葉かな  坂本久刀
  (上五で切れ、落ち葉は朴落ち葉などより具体を)
枝ぶりは亡父の古さよ松手入れ  白石修章
  (あっさりしているが、なかなか良い)
行く秋の夜の心音それともノイズ  榎本祐子
  (ノイズに微妙な感じを掬い取った)
冬灯晩成さぐる電子辞書  増田暁子
昼飯を一人で食んで十二月  小宮豊和
  (大好きな句だ)
身体中空気になった岩の塩  葛城広光
  (空気にかわるに)
山紅葉日増しに艶を増す丹波  松本孜
藁塚の崩れしままや母の背や  樽谷寛子
  (新しい句、ありありと景が見える)
眼底に暗き海溝吹雪くなり  白石司子
  (現代俳句の特徴を持つ句)
霜柱いよいよ黒く豆乾く  村上紀子
  (色の対比が良い)
寒林や時は過ぎ行くすみやかに  坂本久刀
  (寒林が効いている)
喉越しの熟柿あちらから風来る  白石修章
  (あちらからに感心)
息止めて橋を渡れば髪枯れる 榎本祐子
  (橋をさらに具体的に)
爪ほどの椿の蕾命の温さを  谷口道子
  (下五を抜くしで止める)
身辺を行き来する影十二月  小宮豊和
  (十二月だからこそ)

                 (谷口道子記)

2019年11月9日   

飛沫のごとこの陽を楽しむしじみ蝶  増田暁子
虎落笛夜の瘡蓋を剥がしおり    白石司子
太き根や大地に深く黒枝豆        松本 孜
鴛鴦の番ようこそ道頓堀川        金岡純子
やらやらと肉を焦がして秋汚す 榎本祐子
人生は日々の織物文化の日        坂本久刀
豆を煮てをり月光を浴びてをり 小西瞬夏
断層の破砕の間延び蚯蚓鳴く    小宮豊和
読み聞かす声の安らぎちちろ虫 増田暁子
懸巣鳴く僕らは風と徒競争        樽谷寛子
死の淵を揺らしゐるごと鹿の声 白石司子
もて余す枝豆残渣嵩張りて        松本 孜
銀杏の潰れし道も風物詩            金岡純子
鳩吹いて夕陽を海に返すかな   村上紀子
人体の瑕のひろごる櫨紅葉    河田清峯
気がつけば老いの山坂体育の日 坂本久刀

2019年9月14日   関西スクール


夏草と斗う日々の深き皺    松本孜

アイドルを真似る幼子盆踊り  村上紀子

盆飾り来年もこの手でと合掌  金岡純子

塀の中私という驟雨かな    白石司子

夾竹桃の白さ疼くヒ・ロ・シ・マ   谷口道子
新茶淹れては蘇る濃き青空   坂本久刀
苺の実鎖かたびらを動かすぽ  葛城裸時
蝶鍬形(くわがた)虫竹馬の友も山住い  小宮豊和
壊れたピアノ一本指で弾く愁思 増田暁子
虫籠の闇に残りし目玉かな   白石司子
歯を抜かれ鰯雲まで帰るなり  榎本祐子
夏椿は揺れて未来へ翔るかな  坂本久刀

武田先生の講評
本日の最高句は
苺の実鎖かたびらを動かすぽ  葛城裸時
 ただし、次のように変えることを検討する。
蛇苺かたびらを動かす ぽ
独特で他の誰も書けない句だ。



2019年7月23日 関西スクールの概要

参観日紙の時計を持っている              葛城裸時瞬かぬ青蛙いてマトリョーシカ            河田清峯奥の院に悟道の音や滝こだま             坂本久刀川鵜飛んでる寝ぐせの髪が笑ってる          榎本祐子鶏頭花ゆずれない質(たち)そちこちに    増田暁子昼寝の犬ぶどう五粒の足裏かな            谷口道子老鶯や主義主張なく店たたむ             村上紀子空梅雨や水路に鋭い農夫の眼             松本孜バックパッカー風麦秋の観音寺            白石修章旅に来て鮟鱇の貌吾にへばりつく           樽谷寛子城跡の無人の校舎炎天下               坂本久刀完璧やおおむらさきの羽化終る           小宮豊和千代子さんあなたの小塩山立夏           谷口道子                  (谷口道子記)



2019年6月8日 関西スクールの概要




講師の高評価の句



昭和人平成豊かに老を生き          松本 孜

雨の声手繰りよせてる棕櫚の花        増田暁子

友来る土産の切り花蟻お供                         金岡純子

振り返るたび風光る岬かな                         白石司子
口漱ぐ母の音して山滴る                             野崎憲子
青水無月東京を打つ兜太日記                       河田清峯
茎立ちて西洋辛子菜空は紫                        谷口道子
遠景に据わる二上山花の雨                           坂本久刀
畔塗るや田は一面の水鏡                            松本孜
夜毎の闇記憶に溜める白牡丹                       増田暁子
抱きあげる母が笑うよ豆ご飯                       村上紀子
通りすがりの牛蛙でござります                   野崎憲子
枇杷の実が好きなんですよ虫歯抜く                 河田清峯
救命センター梅の実ややの爪ほどの                 谷口道子
アメリカを恋ふ呻きなり牛蛙                      小宮豊和

講評抜粋

「昭和人」は「昭和・平成」に。
「青水月」の句、「打つ」は「撃つ」の方がリアル感。
「茎立ちて」のく、下五を上に。
「夜毎の闇」の句、何処で切れるかによって、二重性の面白さがある。
「通りすがり」の句、変だが抜群にうまい。
                  (谷口道子記)


   


令和元年5月11日


講師の高評価の句



春の水飴がゆっくり割れていた      葛城裸時

光秀の母と眺める青丹波         村上紀子

銀杏並木一気に芽吹き都構想 GO       金岡純子

紫木蓮不惑は遠き傘寿なる        小宮豊和

ひらひらり黄蝶野を嗅ぐ奥の院      白石修章

寂しさも生き抜く力風光る        坂本久刀
牡丹の芽輪廻の色は燃ゆる血に      増田暁子
平成終わる日鵤(いかる)一羽我が庭に    谷口道子
一瞬の瓦の浮遊台風来          白石修章
一飛花に攫われている山羊の眼よ     河田青峰
心中に生きる山清水恩師の訃       坂本久刀
               (谷口道子記)
講評抜粋
「春の水」で切れる。「飴がゆっくり割れていた」ではなく、「ゆっくり割れだした」 でよくなる。
「一瞬の」の句、「台風来」ではなく「夏台風」でどうだ。


平成31年4月13日

講師高評価の句
春の風呂足の指よりやや低い       葛城裸時
厨子王の和船ゆらゆら梅の山       村上紀子
大切なものから捨てて桃の花       野崎憲子
中之島の鳥獣戯画展冴え返る       金岡純子
生き死には厳と病棟冬が逝く       小宮豊和
楽しさは自由の身や柳絮飛ぶ       坂本久刀
辛夷咲く母家も分家も香に包み      増田暁子
ふと春愁横断歩道の真ん中で       榎本祐子
ミモザ行方不明の時間です          河田清峯
樹木葬の幟はためくおむすびころりん   谷口道子
春の虹十一日を禱るまも         村上紀子
木の芽雨鍼灸院の繊き針         榎本祐子
リュウグウへ行きたしデコポンもらったり 河田清峯
                  (谷口道子記)
講評
「花ミモザ」の句、座五の「です」の断定が説明っぽい。
「行方不明となる時間」としてはどうか。



平成31年3月9日

講師による高評価の句

虚空蔵山の明るさ満たす初音かな   坂本久刀

永き日や路地いっぱいのランドセル  白石修章

淡海の春金平糖がびんの底      増田暁子

自転車通勤恋猫と擦れ違う      榎本祐子

西宮戎の韋駄天我が療法士も     金岡純子

兜太の忌若木にあふるる梅の白    谷口道子

旅の宿銘酒一献牡蠣フライ      松本孜

逃げ水追うメリケン波止場の赤い靴  増田暁子

耳疎き日や茹ですぎの法薐草     榎本祐子

去年今年再放送攻めのNHK     金岡純子

白梅や蕾に母を誘う色        村上紀子

 講評
「淡海の春」と「びんの底」、「自転車通勤」と「猫の恋」の対比の面白さ。
「逃げ水追う」の季語がうまい。
    


平成三十一年一月十二日

講師による高評価の句

鹿網を除して元の田に戻る            松本孜綾取りの三角四角年の果             白石修章バーチャルな恋のはあはあ霜柱     榎本祐子林檎むく凜と左手のピアニスト        増田暁子屯田碑にオホーツクの風初景色        坂本久刀初春や翁の面が謡い出す              樽谷寛子翡翠の目つけたる聖母七日粥      村上紀子年の瀬や平成平和に生き続け      松本孜屋島嶺の待ちかねている初明り     河田清峯初凪やはっと湾奥より汽笛       白石修章寒に入るトイプードルの二割引き    三好つや子掌にゴツと故郷(さと)の記憶よ大和芋   谷口道子石山寺に日向ぼこして風甘し      坂本久刀去年今年愚直に並べ五・七・五     小宮豊和

 今回の注意点
 句を鑑賞する場合、意味で読もうとしないこと。句の生のところ、イメージを感じ取るように。
 逆に、句を作る場合。独りよがりではだめ、読み手を意識して少し具体を加えればよくなる。
 写生句はイメージが浮かびやすい。ただし、並みになりやすい。心の中の景を読むのも良い。


関西スクール 平成三十年十二月八日 

講師による高評価の句

秋の蛙しまい忘れし片足よ    樽谷寛子
雛ぎくのぎくに落ちた聴診器   葛城裸時 軒に吊る朱き猪肉手に余る    増田暁子 梟の眠りの中は多面体      白石司子 梟は一刀彫の闇なんだ      三好つや子 次の風に乗ってくつもり冬紅葉  野崎典子 迎合なしやどり木は冬青々と   小宮豊和冬隣無名地蔵の欠茶碗      松本 孜サフランや城門を出る飾り馬   村上紀子表参道べた足軽き落葉かな    白石修章寒星や育ての親の故山行く    坂本久刀北斎の腕まくり4Lの小布施栗  谷口道子
缶蹴りの缶に広がりゆく冬野   白石司子 ちゃんちゃんこ月曜病を懐かしむ 三好つや子十二月八日のバスに乗らんとす  河田清峰 川上は銀の櫨の実鳴るところ   榎本祐子
         (谷口道子記)

  


2018年11月10日 関西スクールの概要 

講師による高評価の句

 東方に光あり萱の岩湧山(いわわき)    樽谷寛子 
 身を反らし点ける灯火京の秋            白石修章 
 枯木立DADAの目玉のあまたなり             白石司子 
 小春日やエンディングノートの筆進む       長尾向季
 蚯蚓鳴く左の欠けるニュースかな               三好つや子 
 人生の午後ピカピカの釘を打つ          坂本久刀
 夏休み粘土のように柔らかい          葛城裸時 
「もみずる」百回唱え鬼になる          榎本祐子 
 チクチク刺す黒の力や黒枝豆          谷口道子
 泡立草つづく伊予路や背を正す         白石修章
 魚眼レンズの中に極月の街                 白石司子
 伊吹嶺に対峙どうどう稲架襖         長尾向季 
 どっちにも歩のある選挙大根引く             村上紀子 
 陽の重み直哉旧居の柿すだれ         坂本久刀 
 躁鬱やオリオンを組みまた解く        榎本祐子
 短日や地下足袋を脱ぐ茶の香り        松本孜 
 羊雲午後の女教師名調子                 小宮豊和


  本日のひとこと

 あまり知られていない地名、山名をつかう場合は、その土地の特徴的な植物などへ焦点を持っていくこと。 
 例1 萱の岩湧山(いわわき)を 岩湧山の穂芒 にするなどの工夫を。 
 例2 伊吹嶺は丁度良い知名度。これが、比叡山や富士山では山のイメージがはっきりし  すぎてバランスが悪くなる。
                              (谷口道子記)

関西スクールの概要 2018年10月9日

講師による高評価の句

1   吹っ切れて秋天走る車いす                 村上紀子

2  滑莧村のポンプ井涸れにけり           樽谷寛子

3  番雀か草露啜りおるバス停                  金岡純子

4  草の花夕陽は透けて語り上手           増田暁子

5  雨上がり毬を飛出す丹波栗                  松本 孜

6  缶詰と缶切り冷やす冷蔵庫                  葛城裸時

7  豊の秋モアイのごとき顎が行く          三好つや子

8     宵闇や無灯火自転車すれ違ふ           長尾向季

9  花野風浅き傷より乾きゆく               小西瞬夏

10  平城宮跡の音色や初嵐                      坂本久刀

11  秋蝶の翅たたむように戦後史       白石司子

12  鱏のごと今日も見ている火夏星      白石修章

13  虹の根をつかみそこねて穴惑い      三好つや子

14  鳥渡るいのち一つを引っ提げて      小宮豊和

15  心頭くらくらいちじく酸いくなる     榎本裕子


                                          (谷口道子記)



2018年9月8日関西スクールの概要 
講師による高評価の句
1  蟬骸そこここ生まれてよかったか    金岡純子
2  かなかなの語尾のにごりの雨もよう   増田暁子
3   濃尾の青田尼僧絵のごと風のごと     樽谷寛子
4  終戦日日焼けた疎開の子の行方       松本 孜
5  雲の峰微動だにせぬ延長戦         白石修章
6  雲を脱ぐ丹波の富士や稲の花        村上紀子
7  シベリアの五万柱に芋殻焚く        小宮豊和

8  林檎人夢にばかり包まれて         葛城裸時
9  全てやりたき整理整頓猛暑来る     坂本久刀
10  調査船稲妻直に沖を切る        谷口道子
11  熱帯夜標本箱という秘境        三好つや子
12  かすれたる家系図烏瓜の花       長尾向季
13  腐りゆく水にぼんやり水中花      榎本祐子
14  空に放つ紙飛行機子規忌なり      白石司子

本日の注意点

 常々、「キレを入れ」と言っているが、「 ”の”でつなげることによる、”切れつつつながる” 得もいわれぬ空気感を表現することも大事 」

 

2018年7月14日関西スクールの概要


 講師による高評価の句
1   川音は闇を執せり恋蛍           村上紀子
2   ブラックバス雑魚喰い荒す青葉闇      松本 孜
3   言い訳の闇にほうたる色退せて       増田暁子
4   植田一面雲も甍も故郷のもの        白石修章
5   サングラス困ってますねん涙目に      谷口道子
6   水中花糊を貼るのを思い出す        葛城裸時
7   黒塗りの教科書の中くちなわ匍う      白石司子
8   曲屋の夏の夜神楽天鼓かな         樽谷寛子
9   冷奴おまけのように父座る         三好つや子
10   胸鰭背鰭菖蒲畑に隠しおく         榎本祐子
11  訃報来る緩む齢に植田風          坂本久刀
12  揺れ最中地震中継見るも我         金岡純子
13  鮒鮓や出雲に生ワニ食べる村        長尾向季

本日の注意点
「名詞」「動詞」「名詞」の組み合わせの場合。上五、下五の置き方に注意。
                                                                                                         (谷口道子記)

スケジュ-ルのお知らせ

スケジュールのお知らせ  関西合同句会 (偶数月の第2土曜日、午後) 2021年12月、2月、4月、6月   休会 海原関西オンライン句(通称 カカオ句会)  2021年12月1日   投句締切 2021年1月10日   ズーム1月句会  2022年1月以降のズーム句会予定...