関西スクール 2020年10月17日(通信教室)
暗闇を剥がしはじめるちちろかな 白石司子
疑うといつもパジャマを着る私 葛城広光
芋粥は小数点のようなもの 葛城広光
負けし子は早稲の香の中一つ星 白石修章
忘却の音色は深く乱れ萩 太田順子
おんぶばった母を泣かせし噂の村 増田暁子
散髪屋枝豆売りの札上げる 村上紀子
我が友の与論島(よろん)憲法座に新酒 樽谷寛子
コスモスの戦げば戦ぐほど夜明け 野崎憲子
コロナ禍を黙し愁思の波の音 坂本久人
木通の実半分ごっこの帰り道 上月さやこ
方位盤ふと白百合の崩れあり 桂凜火
夏果てのおさらいのよう耳鳴りす 榎本祐子
機械化に田は乾し上げて蚯蚓鳴く 松本孜
世間の闇吸うて来たらし秋揚羽 谷口道子
黄落の森姿無き影ながる 小宮豊和
(谷口道子記)
関西スクール 令和二年九月十二日(通信教室)
手のひらに銀河と書いて握りしめ 太田順子
水銀のように団扇光る刻 葛城広光
コロナ禍に負けず丹波の秋稔る 松本孜
トラウマのところどころに鹿の声 榎本祐子
老鶯の鳴く山畑や吾も老い 坂本久人
コロナ禍や時計草の影ゆらぎ継ぐ 坂本久人
新涼や風の途切れに地の匂い 白石修章
旅立ちし駅は無人に緋のカンナ 白石修章
銀河濃し紡錘形に眠る島(人間魚雷「回天の島) 白石司子
百日紅旧家の門の格醒ます 谷口道子
酷暑の一歩すでに私は「ぐでたま」に 谷口道子
銀河ふる稜線人は鈍(に)色(び)の中 増田暁子
労農の耳目に哀し牛蛙 樽谷寛子
白南風が薄物の母巻きしめる 小宮豊和
白鳥のだみ声帰還つげにけり 小宮豊和
関西スクール 令和二年七月十一日(通信教室)
森女に甘える一休山笑う 樽谷寛子
夜の川腹に響くや牛蛙 松本 孜
梅雨寒やヒールにからむ捨てマスク 谷口道子
梅雨寒や寺の茶畑刈り揃う 村上紀子
深深と積もるコロナ禍大祓え 太田順子
なよよかや白い夜明けの稲の花 小宮豊和
紫陽花の萼に宿りし夜の雨 上月さやこ
うたた寝の夢を追いこす夏至の夜 上月さやこ
朝焼は賛美歌のごと父母のごと 白石司子
人間(じんかん)にウイルス紫陽花に日が当たる 榎本祐子
笛に息いま空蝉になる途中 榎本祐子
黒南風に雲読む卑弥呼の吊眼かな 白石修章
片陰ゆく防犯巡視山の街 坂本久人
ゆうやけこやけそして僕等のホームタウン 増田暁子
関西スクール 令和二年六月十三日(通信教室)
春の下駄みたいな形に水へこむ 葛城広光
青嵐古刹の境内吹きめぐる 樽谷寛子
紫陽花や廃墟の隅で自己主張 松本 孜
想念の箱かな紅い夾竹桃 太田順子
明日がいい今日の私に散華かな 太田順子
驟雨なり我がてのひらに父母に 白石司子
紫陽花や手洗い借りる無人駅 村上紀子
過疎なれど名医住みたり花菖蒲 村上紀子
たんぽぽのような赤ちゃん抱きにけり 小宮豊和
コロナよ鎮まれ泰山木の花ひらく 野崎憲子
鼻唄に合わせて新ジャガ炒る夕べ 上月さやこ
静寂に星を浮かべる代田かな 上月さやこ
新緑の朝の沈殿白きランナー 白石修章
郭公の託卵母は白寿に近くなり 増田暁子
明日へのきりのない夢山笑う 坂本久人
にぎやかに位牌の金文字春が行く 榎本祐子
山清水クエクエコンとタゴガエル
(タゴガエルは赤ガエルの仲間だが山に響く大きい声で鳴く)谷口道子
関西スクール 令和二年五月九日(通信教室)
関西スクール
カッコ内は講師の評
種案山子婆の水筒肩にかけ 樽谷寛子
秋の川おんぬおんぬと音がする 葛城広光(このオノマトペは◎)
コロナ騒ぎ冴え返る田に老一人 松本 孜
鯨噴く夜なり海は青を謳い 白石司子(心象風景だが、ありありと景が見えて◎)
雪の回廊花道とも道行とも 白石司子
退職す分水嶺は雪ながら 小宮豊和
春はあけぼのひよこの大群生まれ出る 小宮豊和
六甲や春には春の怪気炎 太田順子(怪気炎はさもありなんと納得。なかなかです)
春星に懐中電灯まっしぐら 太田順子
句をひねる心の文字や風光る 坂本久刀
うぐいすのケキョの裏声媚薬なり 増田暁子(媚薬と断ずるは快挙)
囀や臨月の胎児(こ)がキックする 増田暁子(囀の季語があっての極上の一句)
新コロナ遊び上手の子ら公園 金岡純子
陽炎やコンテナ昇る巨大船 白石修章
葉裏よりふとさよならと初蝶 白石修章
窓側で自粛してをり花の雨 村上紀子
考える葦の若葉を風揺する 村上紀子(自然現象と人間の存在感を捉え、スケールが大きい)
ぎざぎざの己が影あり茎立ちぬ 榎本祐子(取り合わせ◎。茎立ちぬが抜群に良い)
コロナ禍やマスクの紐がからみつく 谷口道子
梅一輪濡れて寂しさまさりけり 上月さやこ(きっちり表現できている)
戯れに手と手を結ぶ夕霞 上月さやこ(恋人直前の気持ちを具体化し、うまい)
(2020年3月は新型コロナを勘案して、休講としました)
果てしなきあなたへの道冬銀河 上月さやこ
焼き鳥屋仮面だけになった人 葛城広光
枯野原父母という遠き汽笛 白石司子
賀状くれし友大寒に送るとは 金岡純子
追憶の波紋を残す初景色 坂本久刀
ボス猿に発信器付け吹きさらし 村上紀子
芹なずなていねいに生きて老い白む 増田暁子
日に九里けふは葛城山(かつらぎ)猪かけて 樽谷寛子
山眠る次なる命育みて 松本孜
寒鮒や流しに光る鱗とり 白石修章
年賀エアメール夫君の返信妻逝きしと 金岡純子
杖とする古人の影や大和冴ゆ 阪本久刀
別の世の音重なり来(く)寒夜なる 小宮豊和
日本はマグマの宮よ梅ひらく 野崎憲子
鋤く人とかすかに離れ寒鴉 村上紀子
余寒なほ内耳にジェラシーの微音 増田暁子
雁木坂下れば城の梅が香よ 樽谷寛子
沈丁花二〇歳の日日昭和かな 太田順子
春山茶花モガの母がふっと現る 谷口道子
(谷口道子記)
関西スクール 2020年1月14日
講師からの高評価の句
寒波くる人生苦しく山静か 坂本久刀
大年の猫と戯むる車椅子 村上紀子
限界集落海市の邑をゆくごとく 白石司子
婆ちゃんが青かびけずる鏡開 増田暁子
鯛の粗突き令和も暮れにけり 白石修章
冬の霧立ちこぎで消ゆジーパンの腰
谷口道子
君の手が梳く黒髪に寒椿 上月さやこ
一月の光ふくらむ木匠館(川上村)
樽谷寛子
地吹雪や体を病めば日々は旅 坂本久刀
老姉妹語らううちに去年今年 金岡純子
人日や己が両手で頬たたく 村上紀子
裁断す樹氷の育つ夜の音 榎本祐子
落つばき紅い布団の迷宮事件 増田暁子
大柘榴食ぶかしこまって二人 谷口道子
消灯の炉なる種(たね)火や遠雪崩
小宮豊和
元気です父に告ぐ日の雪見草 上月さやこ
講師の説明
関西スクール 令和元年12月14日
講師の高評価を得た句、並びに講師の注釈
舞台終えし頬にひんやり冬の虹 金岡純子
(キレがあればより広がる)
てのひらをこぼるる刻よ冬すみれ 野崎憲子
(冬すみれが聞いている)
冬の月白さをまして君は来ず 上月さやこ
(上五、下五を入れ替える)
廃校の庭精気漲る落葉かな 坂本久刀
(上五で切れ、落ち葉は朴落ち葉などより具体を)
枝ぶりは亡父の古さよ松手入れ 白石修章
(あっさりしているが、なかなか良い)
行く秋の夜の心音それともノイズ 榎本祐子
(ノイズに微妙な感じを掬い取った)
冬灯晩成さぐる電子辞書 増田暁子
昼飯を一人で食んで十二月 小宮豊和
(大好きな句だ)
身体中空気になった岩の塩 葛城広光
(空気にかわるに)
山紅葉日増しに艶を増す丹波 松本孜
藁塚の崩れしままや母の背や 樽谷寛子
(新しい句、ありありと景が見える)
眼底に暗き海溝吹雪くなり 白石司子
(現代俳句の特徴を持つ句)
霜柱いよいよ黒く豆乾く 村上紀子
(色の対比が良い)
寒林や時は過ぎ行くすみやかに 坂本久刀
(寒林が効いている)
喉越しの熟柿あちらから風来る 白石修章
(あちらからに感心)
息止めて橋を渡れば髪枯れる 榎本祐子
(橋をさらに具体的に)
爪ほどの椿の蕾命の温さを 谷口道子
(下五を抜くしで止める)
身辺を行き来する影十二月 小宮豊和
(十二月だからこそ)
(谷口道子記)
2019年11月9日
飛沫のごとこの陽を楽しむしじみ蝶 増田暁子虎落笛夜の瘡蓋を剥がしおり 白石司子
太き根や大地に深く黒枝豆 松本 孜
鴛鴦の番ようこそ道頓堀川 金岡純子
やらやらと肉を焦がして秋汚す 榎本祐子
人生は日々の織物文化の日 坂本久刀
豆を煮てをり月光を浴びてをり 小西瞬夏
断層の破砕の間延び蚯蚓鳴く 小宮豊和
読み聞かす声の安らぎちちろ虫 増田暁子
懸巣鳴く僕らは風と徒競争 樽谷寛子
死の淵を揺らしゐるごと鹿の声 白石司子
もて余す枝豆残渣嵩張りて 松本 孜
銀杏の潰れし道も風物詩 金岡純子
鳩吹いて夕陽を海に返すかな 村上紀子
人体の瑕のひろごる櫨紅葉 河田清峯
気がつけば老いの山坂体育の日 坂本久刀
2019年9月14日 関西スクール
2019年7月23日 関西スクールの概要
参観日紙の時計を持っている 葛城裸時瞬かぬ青蛙いてマトリョーシカ 河田清峯奥の院に悟道の音や滝こだま 坂本久刀川鵜飛んでる寝ぐせの髪が笑ってる 榎本祐子鶏頭花ゆずれない質(たち)そちこちに 増田暁子昼寝の犬ぶどう五粒の足裏かな 谷口道子老鶯や主義主張なく店たたむ 村上紀子空梅雨や水路に鋭い農夫の眼 松本孜バックパッカー風麦秋の観音寺 白石修章旅に来て鮟鱇の貌吾にへばりつく 樽谷寛子城跡の無人の校舎炎天下 坂本久刀完璧やおおむらさきの羽化終る 小宮豊和千代子さんあなたの小塩山立夏 谷口道子 (谷口道子記)2019年6月8日 関西スクールの概要
令和元年5月11日
平成31年4月13日
厨子王の和船ゆらゆら梅の山 村上紀子
大切なものから捨てて桃の花 野崎憲子
中之島の鳥獣戯画展冴え返る 金岡純子
生き死には厳と病棟冬が逝く 小宮豊和
楽しさは自由の身や柳絮飛ぶ 坂本久刀
辛夷咲く母家も分家も香に包み 増田暁子
ふと春愁横断歩道の真ん中で 榎本祐子花
ミモザ行方不明の時間です 河田清峯
樹木葬の幟はためくおむすびころりん 谷口道子
春の虹十一日を禱るまも 村上紀子
木の芽雨鍼灸院の繊き針 榎本祐子
リュウグウへ行きたしデコポンもらったり 河田清峯
平成31年3月9日
平成三十一年一月十二日
講師による高評価の句
関西スクール 平成三十年十二月八日
講師による高評価の句
2018年11月10日 関西スクールの概要
講師による高評価の句
東方に光あり萱の岩湧山(いわわき) 樽谷寛子枯木立DADAの目玉のあまたなり 白石司子
小春日やエンディングノートの筆進む 長尾向季
蚯蚓鳴く左の欠けるニュースかな 三好つや子
人生の午後ピカピカの釘を打つ 坂本久刀
夏休み粘土のように柔らかい 葛城裸時
「もみずる」百回唱え鬼になる 榎本祐子
チクチク刺す黒の力や黒枝豆 谷口道子
泡立草つづく伊予路や背を正す 白石修章
魚眼レンズの中に極月の街 白石司子
伊吹嶺に対峙どうどう稲架襖 長尾向季
どっちにも歩のある選挙大根引く 村上紀子
陽の重み直哉旧居の柿すだれ 坂本久刀
躁鬱やオリオンを組みまた解く 榎本祐子
短日や地下足袋を脱ぐ茶の香り 松本孜
羊雲午後の女教師名調子 小宮豊和
本日のひとこと
例1 萱の岩湧山(いわわき)を 岩湧山の穂芒 にするなどの工夫を。
例2 伊吹嶺は丁度良い知名度。これが、比叡山や富士山では山のイメージがはっきりし すぎてバランスが悪くなる。
(谷口道子記)
関西スクールの概要 2018年10月9日
講師による高評価の句
1 吹っ切れて秋天走る車いす 村上紀子
2 滑莧村のポンプ井涸れにけり 樽谷寛子
3 番雀か草露啜りおるバス停 金岡純子
4 草の花夕陽は透けて語り上手 増田暁子
5 雨上がり毬を飛出す丹波栗 松本 孜
6 缶詰と缶切り冷やす冷蔵庫 葛城裸時
7 豊の秋モアイのごとき顎が行く 三好つや子
8 宵闇や無灯火自転車すれ違ふ 長尾向季
9 花野風浅き傷より乾きゆく 小西瞬夏
10 平城宮跡の音色や初嵐 坂本久刀
11 秋蝶の翅たたむように戦後史 白石司子
12 鱏のごと今日も見ている火夏星 白石修章
13 虹の根をつかみそこねて穴惑い 三好つや子
14 鳥渡るいのち一つを引っ提げて 小宮豊和
15 心頭くらくらいちじく酸いくなる 榎本裕子
(谷口道子記)
2018年9月8日関西スクールの概要
講師による高評価の句
1 蟬骸そこここ生まれてよかったか 金岡純子
2 かなかなの語尾のにごりの雨もよう 増田暁子
3 濃尾の青田尼僧絵のごと風のごと 樽谷寛子
4 終戦日日焼けた疎開の子の行方 松本 孜
5 雲の峰微動だにせぬ延長戦 白石修章
6 雲を脱ぐ丹波の富士や稲の花 村上紀子
7 シベリアの五万柱に芋殻焚く 小宮豊和
8 林檎人夢にばかり包まれて 葛城裸時
9 全てやりたき整理整頓猛暑来る 坂本久刀
10 調査船稲妻直に沖を切る 谷口道子
11 熱帯夜標本箱という秘境 三好つや子
12 かすれたる家系図烏瓜の花 長尾向季
13 腐りゆく水にぼんやり水中花 榎本祐子
14 空に放つ紙飛行機子規忌なり 白石司子
本日の注意点
2018年7月14日関西スクールの概要
本日の注意点